会議と祝杯

2007-03-03 samedi

月曜からの風邪、6日目に至ってようやく回復の兆しが見えてきた。
相変わらず鼻水はじゅるじゅる垂れるけれど、身体の内側に熱がこもる、あの倦怠感はほぼ消えた。
極楽スキーまでに本復するとよいのだが。

金曜日は終日会議(午前10時から午後7時15分まで)。
長いと思いませんか。
会議はたしかに必要である。
だが、それ自体は何の教育効果も研究成果ももたらさない。
会議をして、あれこれの規程を作ったり、制度を手直ししたり、人事案件を論じたりするのは、教育研究の基盤整備のための「下ごしらえ」である。
料理で言えば、ジャガイモの皮を剥いたり、煮干しで出汁をとったりするようなことである。
もちろん「下ごしらえ」が整っていないと料理は作れない。
でも、ときどき自分たちが「一日ジャガイモの皮を剥いていたせいで、料理する時間がなくなり餓死した人間」のように思えるときがある。
あるいはよく使う比喩を繰り返せば「100万円の効果的な使い方を議論しているうちに、会議の弁当代で100万円使ってしまった人たち」に思えてくるときがある。
会議は必要である。
けれども、それに割く時間はやはり最小限に抑えるべきであろう。
会議が長くなるのはもちろんなかなか合意に達しない事案があるからである。
なかなか合意に達しないのは、そこに上程された案件の意味について「よく理解していない」人がいるからである。
彼または彼女が「よく理解していない」には理由がいくつかある。
第一の理由は「どうしてそのような案件が上程されるに至ったか」についての「前史」というものを忘れているからである。
第二の理由は「その案件を採択することの必要性と意義についての周知期間」に誰からも説明を受けていないからである。
その人が話し出すと会議が長引くことがわかっているにもかかわらず「周知のための根回し」の対象にならない人というのは、その人が反対しても大勢に影響はないと判断されている人か、ことの条理を説くことがきわめて困難であると評価されている人か、あるいはその両方である人である。
会議の席で「そんな話きいてません」という抗議の声を上げる同僚がまれにおられるけれど、それは言い換えると「誰も根回しをしに来なかった」人であるので、そのような発言をせざるを得ない立場に置かれたことについていささか自己点検の必要があろう。
そういう私はどうかというと、私は「聞いたことを忘れる」のみならず、「根回しに来たので『オッケー、了解』と答えておきながら、そう答えたことを忘れている」ことさえあるので、会議の席で会議を長引かせるような発言はあたうかぎり控えている。
私はどのような案件についても、大勢に唱和する日和見野郎であるが、それは私に定見がないからではなく(ないが)、会議を一秒でも早く終わらせたい赤心のあかしと解釈していただきたい。
長く疲れる会議が終わり、建物の出口で同じく疲労でがっくり肩を落としている同僚Y田先生から「会議が長びくのは組織が瓦解するときの予兆ですよ」と脅かされる。「私の前任校がそうでした」
だそうですよ。みなさん気をつけましょうね。

そのままソッコーで三宮のポートピアホテルへ。
集中医療学会というのが開かれていて、そこの特別講演に甲野善紀先生が来ているので、ご報告とご挨拶をかねてでかけたのである。
医学の学会なので医学書院の鳥居くんと杉本くんが新人の石塚くんを連れて来ている。“ワルモノ” 白石さんも来ていたらしいけれど、すれ違いでお会いできなかった。
甲野先生と陽紀さんをパーティ会場から連れだして、ポートピアホテルのスカイラウンジで祝杯をあげる。
祝杯というのは、甲野善紀先生をこの四月から神戸女学院大学の特別客員教授として招聘することがこの水曜日に理事会決定したからである。
思えば、副専攻をどうするかについて川合学長、松田入試部長、東松大学事務長と入試の待機のときに話しているうちに、ふと「ボディ・サイエンス専攻というのはどうですか?」とアイディアを出し、甲野先生の招聘を思い立ってから1年余。
副専攻構想をとりまとめ、特別客員教授規程を起案してから、教務委員会から始まって、学部長会、学務委員会、人事教授会第一読会、第二読会、常務委員会、理事会と人事案件をひとつひとつクリアーしてゆくのはけっこうな一仕事であった。
ミッション系女子大に武術家を客員教授として招くという大胆な教育プログラムが可能になったのはひとえにこの計画を力強いイニシアティブでひっぱってくださった川合学長のご尽力のおかげである。入試広報的にたいへんな効果があると力説してくださった松田入試部長、第二読会で専門委員として甲野先生の業績に熱弁をふるってくれた飯田先生、力強いサポートをしてくださった上野先生、古庄先生、ほか同僚のみなさんのご理解とご協力で、甲野先生を私たちの大学の同僚として迎えるという夢のようなプランが実現した。
心からお礼を申し上げます。
甲野先生はさっそく2007年度前期からワークショップ1こまを担当される。
「武術を通して見る身体の可能性」というタイトル(これは陽紀さんの発案)での集中講義になるが、どんなことをされるのか今から楽しみである。甲野先生ご自身も「何しようかなあ」と昨日もあれこれアイディアを出して、たいへん楽しそうであった。
甲野先生どうぞよろしくお願い致します。
--------