機密費ベストテン

2007-01-14 dimanche

政治団体の不明朗支出問題が新聞を賑わせている。
「事務所費」「備品・消耗品費」に高額の支出が計上されているにもかかわらず、明細や領収書提出の義務がないので、何に使われたのかわからない。
松岡利勝農相の政治団体は「備品・消耗品」に2年連続で1300万円を計上しているが、明細が示されていない。
政治資金規制法によると「備品・消耗品」にカウントされるのは「机、椅子、ロッカー、複写機、事務所用自動車、事務用用紙、封筒、鉛筆、インク、事務服、新聞、雑誌、ガソリンなど」だそうである。
この費目で年間2000万円超を計上している政治団体もある。
たぶん事務所自動車はロウルズロイスとフェラーリ、事務服はアルマーニのオーダー、ボールペンはフィッシャー、鉛筆はコヒノール、ガソリンはアラブ首長国連邦からの直送なのであろう。
要するにこれは政治団体は「使途不明金」という費目を正式に計上してもお咎めがない、ということである。
法律が「それでよい」と言っている以上、私どもに文句を言う筋はない。
ただ、使途不明金を「事務所費」とか「備品・消耗品費」とかせこい費目でお使いになるのは一国の統治にかかわる選良としていかがなものかと思う。
これはきっぱり「機密費」くらいでいくべきではないか。
この使途不明金の多くは「裏金」として拠出され、「表だってはいえないこと」に使われていることに驚くほど私も世間知らずではない。
政治家諸氏も国政に携わっている以上「越後屋、これはここだけの話にしてくれい」というようなことも多々おありであろうし、アンダーワールドとのおつきあいもおありであろうし、秘匿すべき情報源もお持ちであろう。
そこでひとつご提案なのであるが、それらの支出がいずれも国益増大のためである以上、ここは堂々と「機密費」として支出されればよろしいのではないか。
「機密費」の額を見れば、その政治家の国内政界のみならず国際社会への影響力の大きさが一望で測定できる。
政治家の力量を計ることができるという点で、これほど便利な指標はない。
毎日新聞の見出しは「備品費も高額不透明」とあったが、私はこの書き方には若干不満である。
というのは政治家というのは「不透明」な存在であるべきだと思っているからである。
手の内のカードをすべて有権者にさらすような政治家は政治的ネゴシエーションにおいて大きなビハインドを負う。
例えば、キムジョンイルはその限られた政治的リソースをもっとも効果的に使っている現代政治家の一人であるが、その政治的効果の90%くらいは「何を考えているかわからない。どういう手だてで国益を増大させるつもりなのか有権者(なんていないんだけど)に対する説明責任を負わない」ということから得ている。
政治家の発揮する社会的影響力のかなりは「何を考えているかわからない。次にどういう手を打ってくるか読めない」という点に存する。
どうせ政治資金規制法は底抜けのザル法であるのだから、せめて正々堂々と「使途不明金の額を競う」ことで政治家としての資質をお示し願いたいと思う。
いや、まじめな話、年度末に「機密費総額ベストテン」が発表されたら、私はけっこうわくわくして見ると思う。
現に、閣僚の資金管理団体における備品・消耗品費では麻生太郎くんがトップである。
とはいえ年間924万円じゃスパイ網は組織できないであろうが。
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