いささか旧聞に属するが、日経 MJ の 10 月 9 日号に「大学ブランドランキング」と言うものが掲載された。丸の内ブランドフォーラムという会社が大学進学希望者と企業の採用担当者を対象にアンケート調査を行ったものである。
ブランド力のランキングは地域によって異なる。
関東圏だとベスト10は
1位 東京大
2位 慶応義塾大
3位 早稲田大
4位 京都大
5位 上智大
6位 青山学院大
7位 筑波大
8位 御茶の水女子大
9位 東京工業大
10位 東京芸術大学
なるほど・・・という納得のランキングである。
で、関西圏における調査結果はというと
1位 京都大
2位 東京大
3位 大阪大
4位 関西学院大
5位 神戸大
6位 慶応義塾大
7位 関西大
8位 同志社大
9位 立命館大
10位 早稲田大
これまたなるほど・・・という調査結果である。
関西ではブランドイメージは東大よりも京大が上、慶應よりも関学の方が上。
早稲田は関関同立よりも下なのである。
なるほど。
で、わが神戸女学院大はどうかというと、これが関西圏ランクの19位に位置しているのである。
私学では8位。
20以内にランクインした女子大は関東ではお茶の水大一校。
関西では本学だけである。
本学は関西の女子大の「ブランド力第一位」をご認定いただいたのである。
ありがたいことである。
このランキングについて、代ゼミの坂口入試情報センター本部長がこうコメントしている。
「今回のランキングはおおむね順当な結果といえるが、性格のはっきりした大学が入試難易度と比べて高い評価を受けている印象だ。『都心にあってセレブなイメージがある』『専門性の高い大学』などにあてはまる大学だ。
大学を評価する目安として、総合大学の場合は文学部に注目している。卒業しても手に職をつけられない文学部は年々学生を集めにくくなっている。そうした中でも文学部の評価を維持できる大学は、ブランド力があると判断できる。」
先日、その坂口さんと話したときも「短期的な実効性を求めて専門学校化する大学は淘汰され、文学部をもちこたえることのできる大学が生き残るだろう」という結論を共有した。
「文学部を維持できる大学」というのは言い換えると、「この期に及んでなおリベラルアーツの重要性を信じている大学」ということである。
「卒業しても手に職がつけられない」のは、教育成果が外形的・数値的に表示できないということである。
換金性の高い知識や技能が身についていないということである。
「それでいいじゃないか」というのが坂口さんや私の考えである。
「それでいいじゃないか」と考えている企業の採用担当者もかなりいることがこのアンケート結果から知れた。
「共同体の一員として、隣人たちから信頼され、敬愛され、繰り返し助言や支援を求められるような人間」を育成すること、それが教育の目的である。
しかし、「信頼」や「敬意」や「配慮」や「洞察力」のような人間的資質は逆立ちしても「エビデンス・ベースド」に計量することができない。
それでも、組織が新人を採用する場合、TOEICの点数や資格や免許の多寡よりも、「いっしょに働いて気分がいい人、まわりの人々をチアー・アップし、組織全体のパフォーマンスを高める人」かどうかを優先的に配慮する。
当たり前のことである。
数値的に表示できないような教育成果はゼロ査定するのが当今の成果主義の風儀のように言われているが、「共生する能力の高さ」はおそらくもっとも査定することの困難なものである。
査定が困難であろうとなかろうと、たいせつなものがたいせつなものであるという基本は譲るわけにはゆかない。
「この期に及んで文学部の評価を維持できている大学」というのは「数値化できない教育成果に賭け金を置いている大学」ということである。
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(2006-11-04 16:54)