韓国辛いものツァー初日

2006-02-22 mercredi

関空に朝7時半集合というとんでもない時間なので午前5時起き。外は当然真っ暗。ソウルの華ちゃんに「今からいくよ」とメールを打って、6時1分の芦屋発の JR に乗る(駅前に住んでいるとほんとに便利)。6時12分 JR 西ノ宮発のリムジンバスに乗り込むと、西宮北口から搭乗のセイウチ、どうでしょうのご両人と遭遇。
おはようの挨拶もそこそこに爆睡。
定刻にラグビー舞、ラブリー奈央、酒豪娘、福娘、バレー娘の全員集合。総員8名。
ゼミは15名だから、参加者は半分ということである。ちょっと寂しいが、みなさんバイトやら研修やらでお忙しいのである。
さくさくと搭乗手続きを済ませて、Duty Free で寝酒用のアルコールを仕入れて、コーヒーを飲んで、円をウォンに両替しているうちに出発時間となる。
酒豪娘は酒豪のわりには箱入り娘なので、飛行機に乗るのが生まれてはじめてだそうで、窓にはりついて「先生! 動きました」「先生! 翼がゆれてます!」とか叫び続けている。
生返事をしているうちに再び睡魔に襲われる。
目が覚めるとソウル、インチョン(仁川)空港に着いている。
2001年にオープンしたばかりのぴかぴかの空港である。
今回は JTB のパックなので、ガイドさんが迎えにきている。
早くホテルにチェックインして昼寝をしたいと思っていたのだが、こういうパッケージ・ツァーは「市内観光」と称して免税店を引き回される行程が入れ込んである。
91年の香港旅行のとき、空港に着くなり、酷暑の中、土産物屋を引きずり回されたことがあった。
学生たちが音を上げたので、「お願いだから早くホテルにチェックインさせてくれ」とガイドに頼んだのだが、峻拒された記憶が蘇ってきた。
ガイドは免税店やレストランからキックバックを受け取るシステムなので、この苦役を旅行者に課すのである。
それ以後、ゼミ旅行の前に代理店に必ず「免税店めぐりをするような現地代理店ならお断り」とこまめに注文をつけていたのだが、久しくアジア旅行に行っていなかったためにこのシステムが生き残っていることを忘れていた。
免税店を二カ所回って3時半にようやくチェックイン。空港を出てから3時間経っていた。もちろん免税店で買い物をする学生などいないのだし、無駄なことをするものである。
投宿したのは江南区(カンナムグ)の Hotel Seoul Renaissance。結構なグレードのホテルである。
ホテルのグレードは「バスローブの長さと材質」を基準に近似的に評定できる。
また世界のホテルをあれこれ泊まり歩いていると、「ミニバーの冷蔵庫の設定温度」が各地で違うことがわかる。
総じて、ヨーロッパはわりと暖かめである。
ビールなんか、私の感覚では「ぬるい」。
アジアは設定温度が低めで、ビールがきんきんに冷えている。
私はもちろんこっちのほうが好きである。
ソウル・ルネサンスの冷蔵庫は私が知る限り、世界でもっとも冷たいビールが飲める設定温度になっていた(翌日はさらに冷えていて、バドワイザーが凍っていた)。
湯上がりにバスローブとビール温度を人体実験してから、ただちに昼寝。
たいへんに寝心地のよいベッドで大の字になって1時間ほど爆睡。
5時にロビーで華ちゃんご一家と待ち合わせ。
ご主人の姜大賢(カン・デヒョン)さん、ご令息の眞遠(ジンウォン)とは初対面である。
姜さんはたいへん流暢な日本語を話される。きりりとした面立ちの礼儀正しい青年である。
華ちゃんとは卒業以来7年ぶり。
ブログの「長屋」で「うほほい韓国レポート」を連載してもらっていたので、あまり無音という印象はないが、それでも7年もお会いしていなかったのである。
韓国に暮らして6年。ソウルにはこの1月に引っ越したばかりで、それまでは姜さんの故郷である光州にいた。
大学院にも行っていたし、現地では日本人の友達も何人かできたのだけれど、ソウルはまだ日が浅いので友達がいないそうである。
Mixi には「韓国人男性と結婚した日本人女性」のコミュニティがあるらしい。
そこに会員登録したので、これからだんだん知り合いが増えるだろうという話であった。
ウチダゼミの旧友たちとも、mixi の「内田樹」というコミュニティで再会を果たして、メールのやりとりをしているそうである。
そういうふうに使うものとは知らなかった。
さっそくお二人のご案内でホテル近くの「おいしいもの」を食べに行く。
食べるのは定番の焼き肉ではなくて、ポッサム。
ゆでた豚肉をキムチや白菜でくるんでコチジャンをつけて食べる(ガイドブックには「俳優クォン・サンウの好きな料理」とある)。
こ、これは美味い。
それに豚足。山盛り。
チヂミ。スンドゥブチゲ。
韓国ビールに韓国のお酒をぐぐぐと頂きながら、全員ばりばりと食べまくる。
杯を受けるときに左手を胸に当てるコリアン・スタイルで杯を交わしながら、姜さんの韓日の比較文化論を伺う。
徴兵制度の話が興味深かった。
徴兵にゆく前は誰でもいやでいやでしょうがなくてげっそりしているのだが、いざ兵舎に閉じこめられて、朝から晩までたいへんシンプルな生活をしていると、いつのまに人間がシンプルになってしまう。すっかりマッチョに人格変容をきたし、これはこれでたいへん生きやすいのだそうである。
ではそのまま職業軍人になるかというと、徴兵で取られて軍隊が気に入って、職業軍人になる若者はやっぱりほとんどいないのだそうである。
二十歳の大学二年のときに応召するケースが多く、兵役が終わって大学に戻ると同級生は3歳4歳年下の子供ばかり。
最初は「けっ、軍隊も知らないガキどもが」と思っているのだが、この同級生たちとお酒を飲みに行って、「先輩先輩」と立てられ、女子学生からは「渋くてステキ」とみつめられると、いつのまにかすっかり毒気が抜けて、たちまち三月ほどで徴兵にゆく前の「ふつうのお兄ちゃん」にもどってしまうのだそうである。
なにはともあれ、「休戦」状態にあるとはいえ、38度線をはさんで臨戦態勢の国である。平和な我が国とは事情がずいぶんと違うのである。
このポッサムは学生7名分まで全部姜さんが奢ってくださった。
全員で「ごちそうさまでしたー」と唱和する。
駅三(ヨクサム)駅でお別れ。
みなさん、元気でね。
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