風邪癒えず

2005-10-19 mercredi

ぐえほぐえほ。
風邪がまだ治らない。
でもおかげで体重が減った。
73.8キロ。
「74キロの壁」が突破されたのである。
「ウチダくん、風邪ひいて、体重が減ったのを喜んでどうするんだ。バカかね、キミは」
ちがうって。
風邪ひいたら気分が滅入るじゃない、誰だって。
そういうときに「風邪を引いたことによってもたらされるよいこと」を列挙する、というふうに発想を切り替えることにしてるの、私は。
飯食わないから食費が浮く。
酒のまないから肝臓が丈夫になる。
煙草を吸わないから肺がきれいになる。
たっぷり寝て日頃の睡眠不足を解消できる。
いつもは読めないエンターテインメント本をベッドでごろごろ読める。
おまけに熱で体重が減る。
いいことづくめじゃないか。
ああ、風邪が引きたい。もっといつまでも引いていたい。
そういうふうに念じると、たいていの風邪は治ってしまうものなのだ。
「風邪の神さま」にしても私を喜ばせても業腹なだけだからね。

『街場のアメリカ論』が発売になる。
献本した先から「先ほど頂きました。けらけら笑っているうちに読み終えました」というメールがどかどかと届く。
どうも2時間くらいで読み終わってしまうらしい。
250頁で活字ぎっしり詰まっている本だし、中身だって、それほどすらすら読まれてよいはずのものではない。
もう少し読者のみなさんにも苦吟するなり輾転反側するなり歯がみするなりして頂かないと、憎々しげなことを書き連ねた甲斐がない。
「ふざけるな!」と本を壁にたたきつけるとか、焚書の刑に処すとか、そういうスペクタキュラーなリアクションを期待していたのであるが、いまのところそういう反応はない。
もしかすると、日本の読者諸君はみんな「私と同じこと」を考えていたのかも知れない。
それはそれでちょっと問題ではないかと思う。
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