パソコンの頓死と思いがけない贈り物

2005-07-15 vendredi

「ピンチ」というのは、いろいろなところが同時多発的に機能不全になることである。
風邪が治ったら痛風がこじれて歩行困難となり、授業も今日で終わり、やれうれしやこれから仕事に没頭できると喜んでいたら、パソコンが頓死した。
村上春樹によると、こういうときには
「そういうものだ」と「それがどうした」で応じるのが正解だそうであるが、頓死パソコンを前にこめかみに青筋が立つのを制し得ないウチダはまだ人間的成熟が足りないようである。
どうして数十万円を投じて購入し、必須の全情報を収蔵させた高額の情報機器が、このように他愛もなく「へこっ」と死んでしまうのであろうか。
そういうことが許されてよろしいのか。
今回は頓死ながらも「あ、すみません。死にそうかも・・・あ、死にます・・・死にます」と苦悶のシグナルがあっただけでも多とすべきか。
だけど、どうすんだよ、ハードディスクに入っているあの膨大な資料は。
フェイルセーフ用に PowerBook が用意してあるので、とりあえずの物書き仕事やネット仕事に支障はないが、今朝、メールを読んでいる最中にウィンドウズマシンが頓死したので、昨日の夜から今日にかけて私にメールをくださった方のメールは全部消失してしまった。
というわけで業務連絡です。
昨日夜半から今朝にかけてウチダあてにメールをくださったみなさん。
メールは届いておりませんので、緊急の御用の方はもう一度メール再送をお願い申し上げます(江さんのメールを読んでいる途中でパソコンが死んだので、江さんお手数ですが原稿もう一度お願いしますね)。
t-uchida@mail.kobe-c.ac.jp
に送信してくだされば大学のPCと自宅のPCの両方にデータが残るので、それがいちばん安全である。
その他いろいろたいせつな情報やらお約束やらのメールもあったがすべて消えてしまった。
イワモト秘書があるいは HD の残骸から情報を取り出してくれるかもしれないけれど、そのまま消失してしまう可能性もある。
私に何か仕事を頼んだけれど、何の音沙汰もそれからない・・・ということがあった場合は、原稿も原稿お届け先のメールアドレスもすべて失われてしまった可能性を考慮されるとよろしいかと思う。

日本大学生物資源科学部食品加工実習センターというところから大学宛に箱が届いた。
あけてみると「ミートソース」や「レバーペースト」の缶詰が入っている。
うれしい贈り物ではあるが、私には日大からお中元をいただく義理がない。
どなたかへの誤配ではないかと送り状を見るが、たしかにウチダ宛になっている。
私を毒殺しようとするほどに憎んでいる人間なら三人くらい思いつくけれど、私を陥れるためにこれほどの手間ひまをかけるくらいならむしろ私のことを一刻もはやく記憶から消したい・・・というふうにお考えになっているはずであるから、謀略説はしりぞけてよろしいのである。
それにしても理由のわからぬ届けものというのは気持ちが片付かない。
一夜明けて、メールボックスのDMをどんどんゴミ箱に放り込んでいたら、日大から郵便が来ていた。
おお、ここに回答があるに違いない。
今年度の入試問題に利用させていただきましたというお礼状であった。
ご丁寧なことである。
必ずしも入試問題に引用をしたすべての学校が著作権者に連絡をくれるわけではない。
まして、「お礼の品」を添えて・・・ということになると、私の経験した限りでは、日本大学と神戸女学院大学だけである。
日本大学が(本学もだけど)たいへん礼儀正しい大学であるということはこういうこまやかな気遣いから知れるのである。
おそらくは生物資源科学部で飼育されている健康な家畜さんたちから作られた純良にして無添加の食品なのであろう。あるいは大学発のヴェンチャー起業というようなことをなされているのかもしれない。
ともあれ日大の関係者のみなさまにお礼かたがたますますのご発展を祈念させていただくのである。
今晩はだからミートソース・スパゲッティ。
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