朝日カルチャーセンター講演打ち上げ!

2004-04-01 jeudi

朝日カルチャーセンターの連続講演「身体的思考」全6回が無事終了。
この講演は日記にも書いているとおり、基本的に即興である。
当日のお昼ごろにネタを考えて、関連する資料をレジュメに打ち込んでメールでカルチャーセンターに送信、それからその話をどうやって「つなぐ」か芦屋から大阪までの電車の中で考える、というたいへん「綱渡り」的なパフォーマンスである。
しかし、人間「火事場のバカ力」とはよく言ったもので、準備がなければないなりに、その場しのぎの小咄をいくつがつなぐと、90分でちゃんと「オチ」がつくから不思議である。
人間というのは、毎日ふつうに暮らしているだけで、「必要な情報」とそうでない情報を無意識的に仕分けしている。
私の記憶庫にストックされている情報は実はすべて「私にとって必要な情報」なのである。
ただそれらの断片的なデータが「どういうふうにつながるのか」をデータをストックしている本人も分かっていないというだけのことである。
折り込み広告の買う気のぜんぜんない商品のスペックなどを熟読しているとき、自分はいったいなぜこのようなゴミのような情報を拾っているのか、ウチダ本人には理由が分からない。
そのときには分からないけれど、そのゴミ情報の中の何かが、それ以外の何をもってきてもリンクできないようないくつかの断片をつなげて、ひとまとまりの知見を構成することがある。
なるほど、そういうことか、と事後的に腑に落ちるのである。
本人は分かっていなくても、私に代わって「ウチダがいずれ必要とするであろうデータ」を集めている「ひと」(誰だか知らないけれど)にはちゃんと分かっているのである。
この「ひと」とはふだんはコンタクトをとることができない。
しかし、「火事場」になると出てくる。
あるいはレイモンド・チャンドラーや村上春樹がしていたように、毎日決められた時間に、決められた時間だけ、机に向かってじっと瞑目していると、自然に指先がキーボードを叩き始めるという仕方で「到来する」ことがある。
「私に代わって情報を仕分けしているひと」とコンタクトを取るための方法はひとによって違う。
たまたま私の場合は、「十分な下準備をしないで聴衆の前に立つと、『このひと』が助け船を出してくれる」ということが経験的に分かっているので、そうしているのである。
この講演は少し刈り込んで(なにしろ全部で9時間しゃべってるから)、医学書院で本にまとめてもらって、秋頃には出版の予定である。
最終回の講演を打ち上げて、エディター組、三軸自在軍団、街レヴィ派混成軍といういつものメンツでイタリアンの MUSICA でプチ宴会。
今日はちょっと気張ってスパークリングワインで乾杯。生ハムやスモークサーモンやパスタやピザを囓りながら、ワインをのんでわいわいとおしゃべり。
けっこう心理的には負荷のつよい仕事だったので、とりあえず大過なく終えることができて、なんだかずいぶんほっとして、舌もおのずとなめらかになる。
この連続講演を企画して頂いた朝日カルチャーセンターの河原宏さん、事実上のプロデューサーである医学書院の白石正明さん、毎回応援に来てくださった本願寺出版社の藤本真美さん、「インターネット持仏堂」の相方である釈徹宗先生、プロボクサー本田秀伸さん、街レヴィ派の堀埜浩二さん、小林和子さん、三宅接骨院の三宅将喜さん、福原秀夫さんをはじめとする “三軸自在軍団” のみなさん、“いつもの” ウッキー、いちいちお名前を挙げることができませんが、これまで聴講してくださったすべてのみなさん。おかげで楽しい仕事ができました。どうもありがとうございました。
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