12月23日

2002-12-23 lundi

あっと言う間に今年も終わってしまいそうである。
筒井康隆のSFにだんだん時間の経過が速くなって、最後の方は「あれよあれよ」と言っているうちに「時の終わり」が来てしまうという、非常にリアルな物語があるが、あれはたいへん実感のこもったものである。
ついこの間まで16歳くらいであったのが、あれよあれよというまに三十男となり、あれよあれよというまに厄年を迎え、あれよあれよというまに馬齢重ねること五十有余年。このままでは次の夏くらいで還暦を迎え、来年冬あたりには卒寿の祝いということにもなりかねない。
営業期間が残り少なくなったところで「駆け込み」発注があって、書かなければならない本が残り22冊となった。こうなると「生きているうちに原稿をお渡しできれば」というのもまるっきりのジョークとは言えない。おそらく22冊のうちのいくつかについては、担当編集者は原稿をとりはぐれているうちに私の訃報に接することになるであろう。

ようやく冬休みになったが、仕事が立て込んでいて、大掃除も夏物冬物整理もできないし、買い物にも出かけられない。
毎朝まずパソコンを開けて、メールを読んで返事を書く。それだけで昼過ぎとなる。
昼時ともなると空腹になるのでラーメンなどを食す。ものを食すとたちまち睡魔に襲われる。そのまま昼寝をする。日が暮れる頃にぼおっと目をさまして、あわてて仕事を始める。ものの二時間もすると日はとっぷり暮れ、「本日最初の一杯」の刻限となる。本日最初の一杯を頂いてしまうと、私の勤労意欲は「あと白波とぞ失せにけり」状態となり、そのままへたり込み、映画を見るか小説を読むか音楽を聴くか、あるいは悪銭を身に帯びて街に繰り出すか、いずれ再び睡魔が訪れるまでときは空しく過ぎ去るのである。

20日がアジサカ画伯ベルギーより一時帰国を奉祝する会、21日が合気道会納会、22日が鈴木晶先生を迎えての街レヴィ派総決起集会といかにも年末らしい賑やかなイベントが続いた。
鈴木先生が来られるというので、『ミーツ』からは江さんと青山さん、ジャックの街レヴィ派は橘さん国分さん小林さん野村さんと常連が顔を揃える。
ワインバーでウチダと久闊を叙していたら、それまで静かに呑んでいたカウンターの客たちが次々とスツールを降りて、鈴木先生にサインを求めて著書を手ににじり寄ってくるというカフカ的=フィリップ・K・ディック的情景にはさすがの鈴木先生も驚かれていた。
おそるべし、「人民の海を泳ぐ」街レヴィ派の底力。