6月25日

2002-06-25 mardi

続けて本が出たせいで、どどどと出版社からのオッファーが続いている。
「本を出しませんか」というお申し出はたいへんたいへんうれしいのであるが、すでにバックオーダーが滞貨している。
いま「書き下ろしを・・」と言っていただいても、果たしてウチダの存命中に原稿をお渡しできるかどうかさえおぼつかない。
この場を借りまして業界関係のみなさまには、ウチダの受注状況をご告知しておきますので、現在心秘かにウチダ本を企画中の編集関係のみなさまは、ただちに企画書を最寄りのゴミ箱に投じられますようご案内申し上げます。

(1)国文社、レヴィナス『困難な自由』改訳(まだ280頁残っている。今年中には必ず出版しますと中根さんと「男の約束」をしたので、ともかくこれが最優先)
(2)鈴木晶先生と共訳のジジェク『ヒッチコック/ラカン』。締め切りがもう来ているらしいが、まだ一行も訳していない。ひえー。夏休みはまずこれから片づけなければ。
(3)講談社、レヴィナス論書き下ろし。もう三年くらい前にお約束した本。せりか書房のレヴィナス論を書き上げたら、すぐに取りかかりますと、これも「男の約束」をしてしまった。
(4)晶文社、『おじさん的思考パート II』。「街場の現代思想」など、既発注文原稿のコンピレーション。これがいちばん早く本になりそうだ。
(5)新曜社、身体論。原稿はもうだいたい揃っているので、あとは書き整えるだけ。でもその時間がなかなか・・・しかし年内には原稿お渡しします渦岡さん。
(6)冬弓舎、甲野善紀・名越康文両巨頭との鼎談(企画中)。ただしこの企画は三人が揃ってしゃべりはじめると一日で一冊分の原稿ができるはず。
(7)ちくま新書(企画中)
(8)洋泉社新書(企画中)これはコンピレーション本なので、案外早く出るかもしれない。
(9)新潮新書、「大人になるための本」(企画進行中)
(10)径書房、フェミニズム批判論集。これは既発のフェミニズム批判論と、例の引き取り手のない原稿。『フェミニズムについて私が知っている二三のことがら』(仮題)
(11)角川書店(企画中)
(12)文藝春秋(企画中)
(13)青春出版、『哲学のレッスン』(企画中)

と、ご覧の通り、本日までのバックオーダーが13冊。
これが全部ハケて、私が「あー、ひまだ。どこから仕事がこないかなあ」とつぶやくような日が存命中に訪れるということがあるのだろうか。
ヒマでヒマで困っていたときには、誰も私に仕事を頼みに来ず、忙しくて忙しくて困っていると、どかどか仕事が来る。
ヒマなときも、忙しいときも、私が書いていることはまるで同じなのに。
世の中、なかなかうまくゆかないものである。

今日はこれから『ミーツ』の原稿を書かないといけない。
はじめて締め切りに遅れてしまった。
「大人になること」というムズカシイ主題なので、考え込んでしまったのである。
江さんは「直球ど真ん中」をご所望のようだが、はたしてご要望にお応えできるかどうか。
8時半になったらサッカーが始まるから、それまでに仕上げて送らないと。
うう、たいへん。