あきれてものも言えない老父以外全員騒がしい内田家湯治の旅が終わり、小田原駅頭で兄上親子と別れて神戸へ。
ユイスマンスの『彼方』を旅の間に読み終わる。
彫心鏤骨の名訳の田辺貞之助先生には申し訳ないが、まるでつまらない小説だった。
デ・ゼルミーがオーギュスト・デュパンみたいに、その恐るべき強記博覧をもって黒ミサ殺人事件を解決するのかと思っていたら、ぜんぜんそういう話ではなく、デ・ゼルミー以下の登場人物たちは、全員単なる「雑学を自慢するだけの雑学者」であった。バカだ、こいつら。
次に True love never runs smooth という言葉の典拠を探してシェークスピアの『真夏の夜の夢』を読む。(福田恒存先生の訳は「まことの愛がおだやかに実を結んだためしはない」でした。「縁は異なもの味なもの」という訳をつけた剛胆な翻訳者もあると聞くがほんとうだろうか。)
さすがにシェークスピアはユイスマンスの100倍面白い。(それにしても美内すずえ先生の『ガラスの仮面』における『真夏の夜の夢』解釈はみごとであった。シェークスピアの原作より面白いとは言わぬまでも、遜色がない。)
家にもどって、年賀状の返事を十枚ほど書いて、たまったメール32通に返信をするともう日が暮れた。
帰省中に書いた晶文社の原稿の決定版をメールで送る。
これで2002年度出版予定の最初の一冊が完成。
1月5日に「一丁上がり」というのはなかなか好調なペースである。あと6冊。
すると鈴木晶先生から『ヒッチコック/ラカン』の翻訳のキックが入りましたという怖いお知らせが届く。あと7冊か・・・
(2002-01-05 00:00)