10月31日

2000-10-31 mardi

おっと、うっかりしているうちに10月も終わってしまった。
ミレニアムとか2000年問題とか騒いでから、もう1年が経ってしまったのである。20世紀もあと2ヶ月。あっという間である。
ついこのあいだまで16歳だと思っていたが、いつの間にか白髪の50男となってしまった。まったく Time and tide wait for no man である。
中学生のころに覚えたこういう出来合いのフレーズというのはいつまでも忘れないものである。いまでも、条件法を教えるときに使う英語の仮定法過去の例文はあいかわらず If I were a bird, I would fly to you.「もし私が鳥であったら、あなたのもとに飛んで行くのだが」である。これだけはすらすらと出てくる。
いつも同じでは芸がないので、先日は石川君にもらったテープに入っていた
Love has no pride の歌詞を借りて、If I could buy your love, I would truly try.「もしもあなたの愛をお金で買えるなら、私はきっとそうするわ」というのを板書したのであるが、訳文を書いているうちになんだかこっちが恥ずかしくなってしまった。
だいたい英語とかフランス語の教科書にでてくる例文には恥ずかしいものが多い。
いちばん恥ずかしいのは Si j'etais riche, j'acheterais une maison.「もし私にお金があったら、家を買うのだが」というやつである。こういう例文を読むと、それを書いた大学教師のかなしい家庭の事情が透けて見えて、涙が出てくる。
というわけで、時間はどんどん経ってゆく。

昨日は原君を鬼木先生にご紹介する、という大事なご用があった。
鬼木先生の体捌き、杖と太刀遣いの鋭さにすっかり感動。
「こういうふうに身体を遣いなさい、ということを本に書いてあるものを読んだことはありますけれど、目の前で実際に動いているのを見たのははじめてです。眼福、眼福」とうるうるしていた。
「神戸女学院の人たちは、ほんとうに恵まれた環境で稽古してますね。こういうお稽古を続けられたら、いずれ早稲田も東大も追い抜かれてしまうかも知れません」ということでありました。みんな、きいたかね。
稽古が終わって、ぞろぞろと「ふじや」でビールとワインをごくごく呑みながら、焼き鳥、上海やきそば、さんま、湯豆腐、チヂミ、唐揚げ、餃子、焼きおにぎりなどをばくばく食べつつ、武道についてひとびとはさらに語り続けるのでありました。
原君から「もなか」のおみやげを頂きました。明日いただきましょう。ごちそうさま。