このたび図らずも理事長を拝命することになりました。まさか75歳になって、ふたたびスーツを着て、ネクタイを締めて「出勤」する身になるとは思ってもいませんでした。
60歳の時に早期退職させて頂いたのは、会議に出ることにうんざりしていたからでした。教務部長になった時に、課長から「出る会議のリスト」を渡されました。「いくつあるんですか?」と訊いたら「47です」と言われて気が遠くなった覚えがあります。それから6年間「会議の人」として過ごし、さすがに「もう、だめ」となって退職したのでした。
退職した年、2011年秋に神戸市に凱風館という道場兼自宅を建てました。俗世から離れ、稽古と執筆に専念して涼しく余生を過ごすつもりでした。ところが、世情穏やかでなく、やむなく「学者の会」の旗を掲げて国会前で演説をしたり、SEALDsの若者たちとデモに行ったり、慨世の文を草するようになったり、気がつけば日々連載に追われ、年に何冊も本を出し、講演に飛び歩く「火宅の人」となり果てておりました。
加えて今般は理事長拝命という「青天の霹靂」的事態を迎えました。人生思い通りにはゆかないものです。でも、「こんなはずではなかった」と長嘆することにはもう慣れております。「これも天命」と思っておとなしくお引き受けすることに致しました。
20代で起業して会社を経営し、転じて大学管理職となり、今は五人の書生を雇用する道場主ですので組織運営について多少の経験はあります。私が経験から学んだのは、組織は性善説に基づいて運営するのが最も効率的だということです。
組織の成員たちを「機会があれば権限を私的に用い、公共財を私腹に収めようとする人」とみなして性悪説で組織を運営すると膨大な管理コストを要します。でも、いくら厳密に管理しても、そこからは価値あるものは何も生まれません。
それよりは、「みんな善い人」という初期設定で組織運営した方が費用対効果は圧倒的に高い。もちろん集団の足をひっぱる人はどんな集団にもいます。根絶することはできません。でも、それには構わず、「善き人」たちが気分よく働いて集団のパフォーマンスが向上するように環境を整える方がずっと合理的です。そんな気楽な学舎を創りたいと思っています。みなさん、どうかご協力ください。(5月20日)
(2026-05-20 10:32)