釈先生の仏教伝道文化賞・沼田奨励賞受賞のお祝い

2017-08-28 lundi

仏教伝道協会の今年度の「仏教伝道文化賞・沼田奨励賞」の受賞者が釈徹宗先生と決まった。先生のご紹介のための一文を協会から依頼されたので、釈先生の法力について書いた。

釈先生、受賞おめでとうございます。
第五回涙骨賞(『不干斎ハビアン 神も仏も棄てた宗教者』、新潮選書、2009年)、第五回河合隼雄学芸賞(『落語に花咲く仏教 宗教と芸能は共振する』、朝日選書、2017年)に続く受賞を心からお祝い申し上げます。
これまでの賞は宗教学者としてのお仕事に対するものでしたが、今回は僧侶としての活動に対するものですので、お喜びもひとしおだろうと拝察します。
釈先生は「文武両道」ならぬ「僧学両道」をみごとに実践されています。それについて見聞の一端を語ってお祝いの言葉としたいと思います。

釈先生とのご縁は共同研究から始まりましたので、実は先生の僧侶としてのたたずまいがどういうものかは、わが家で亡父のお盆のご回向をして頂くまで存じ上げませんでした。その時、墨染の衣の裾を翻して登場された釈先生のご回向によって気持がさっと涼しく開けたことを今も記憶しております。釈先生は博学の宗教学者であるというだけでなく、儀礼を通じて人を癒す力を持っているということをその時知りました。

その感をさらに強くしたのは、釈先生と二人で主宰している「聖地巡礼」の「京都異界巡り」の時のことです。
この時は十名余の巡礼部員と連れ立って、紫野、六道珍皇寺、鳥辺山などいささか妖気のこもったところを歩きました。清水寺から下る頃に日が暮れ始め、小雨も降り出し、巡礼部員たちの足取りが重くなってきました。その時、釈先生が大谷本廟の一室に一同を招き入れて、しばらくご法話をして下さいました。終わって外へ出ると、雨雲は上がり、西の青空から明るい太陽が一同の顔をあかあかと照らしました。なんだか気分が軽くなりましたと釈先生を振り返って申し上げると、釈先生が「みなさん、だいぶ非日常に行ってしまわれたので、儀礼を通して日常へ戻ろうと思って」と静かに微笑まれました。釈先生の「法力」をその時実感しました。

現代の科学では「法力」などというものは「エビデンスがない」ということで存在を否定されるのでしょうけれど、修養を積んだ僧の端正な挙措と儀礼が周囲の空間と人の心の乱れを整える力を持つことことは経験的に確かです。
今回の賞が先生のメディアでのご活躍のみならず、伝道者としての「法力」を顕彰するためのものであれば、日ごろ釈先生のお導きに浴する身としてこれにまさる喜びはありません。