ルモンドの記事から(天皇退位について)

2016-07-15 vendredi

L’abdication de l’empereur évoquée
LE MONDE | 14.07.2016 à 07h37

天皇は退位の意向を持っていないと7月13日水曜日夕刻に宮内庁は断言した。同日の早い時間に、公共放送NHKと共同通信は数年以内に明仁が退位する可能性があることを報じた。
1989年に即位し、現在82歳になる天皇は、政府筋によると、以前から「この地位にあるものが果すべき責務」を十全に担い得る者に譲位したいという意向を洩らしていた。
「退位はない」と同日夜に宮内庁の山本信一郎次長は述べた。だが、観測筋によると、これほどのニュースが確かな筋からの裏づけなしにNHKや共同通信から報道されることはありえないという。さきに五月に宮内庁は君主の公務の削減を発表していた。
この情報の裏づけが取れれば、これは明仁の直系の祖である光格天皇(1771~1840)が1817年に退位して以来のこととなる。
その場合、皇位は皇太子徳仁(56歳)に継承される。皇太子はオックスフォードで学び、元外交官の雅子妃と結婚している。夫妻には愛子(14歳)という一女がある。
退位については法律に規定がない。この問題はただちにメディアと政界を揺るがすことになる。
「皇室典範の改定が必要になると思う」と与党自民党の佐藤勉国対委員長は述べた。皇室典範には退位の規定がなく、第四条には「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」としか書かれていないからである。
皇室典範の改定には全党派が支持している。ただし、共産党は小池晃書記長が退位の声明はまだ公式なものではないと述べて態度を保留している。
今上天皇は日本の125代天皇で、歴史上はじめて平民(日清製粉という食品業者の社長の娘)を皇后に迎えた。彼は率直で国民に親しい天皇というイメージを作り上げて、日本国民には非常に人気がある。
高齢に伴い、天皇は儀礼的な活動を抑制し、訪日する外国要人との公式会食や地方自治体の首長との会見などを減らして来た。2009年にも天皇皇后は日本各地訪問の際のスピーチを断っている。
明仁は今年の冬に風邪を引いた。2012年には冠状動脈のバイパス手術を受け、その1年前には肺炎に罹患し、2003年には前立腺腫瘍の手術を受けている。
退位についての情報は7月10日の参院選における安倍晋三総理大臣陣営の圧勝の三日後にリークされた。参院選の当日、安倍氏は日本経済の難問への取り組みを後回しにして、1947年制定の平和憲法の改定に言及した。
2012年に起草された自民党の改憲草案によれば、天皇の地位は現行憲法における「国家と国民の統合の象徴」から「国家元首」になる。
天皇には政治的権威はないが、天皇は安倍氏の政策選択に必ずしも同意していない。
第二次世界大戦時の役割についていまだに議論されている裕仁の後継者として、明仁は世界平和と、軍国主義日本の犠牲となった国々とりわけ中国と韓国との和解をつよく求めて来た。
2015年に明仁は終戦70年記念に際してさきの大戦に対する「深い反省」の意を表明した。後継者である徳仁皇太子も憲法に対する愛着と、「平和のはかりしれない価値を心に刻む」との意志を約束している。