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人質殺害後、岐路に立つ日本

The Guardian 紙が2月1日に東京特派員発のKilling leave Japan's pursuit bigger foreign role at the crossroad (「死者が出たせいで、国際関係で目立とうと思っていた日本の足が止まった」)という記事を掲載した。
現在の日本の政治状況について、日本のどのメディアよりも冷静で、かつ情報量が多い。たった一人の特派員(取材対象から見て、たぶん日本語ができない記者)の書く記事の方が、何十人何百人を動員して取材し、記事を書いているマスメディアより中身があるというのは、どういうことなのだろう・・・


国際関係においてこれまで以上に目立つ活躍をしたいという日本政府の決意は、イスラム国(ISIS)の活動家による市民二人の暴力的な死を迎えて、岐路に立っている。
日曜の朝、日本は後藤健二の斬首という残酷なニュースで目覚めた。同国人湯川遙菜が同じ運命をたどったその一週間後のことだった。日本はそのとき自分たちがISISの標的リストに登録されたことを知ったのである。
「積極的平和主義」とは記録的な軍事費支出、武器輸出、戦後日本の外交的なレゾンデートルに対する法改正による攻撃といった一連の政策を正当化するために安倍晋三首相が用いてきたこれまでより強硬な防衛構想のことであるが、その適否がこれから問われることになる。
ISISに対する非難を一通り済ませたあと、安倍はシリアでの出来事に関与するものと見られている。それが結果的に日本国民を危険にさらすことになろうとも、アメリカの有力な同盟国であり、かつ中東の石油の輸入国という立場にある以上、日本はこの地域の安全を保証するためにこれまで以上に大きな役割を演ずるべきだということを示すためにである。
後藤の斬首映像が発表された後も、安倍は強硬姿勢を変える様子がない。
「ご家族の悲しみを思うと、言葉もありません」と明らかに動揺した様子で語ったあと、安倍は日本は引続きISISと戦う国々への人道的支援を続けると述べた。
後藤の死は激しい嫌悪感をもって迎えられたが、安倍はこれを奇貨として、憲法が彼の国の軍隊に課している制約(憲法九条の下では自衛隊の活動は専守防衛に限定されている)を緩和したいという彼の宿願を達成しようとしている。
「今回の悲劇は九条の再解釈と自衛隊の海外活動の軍事的権限の拡大を計画する安倍の決意を強めただろうと私は見ている」とMark Mullins (オークランド大学教授、日本研究)は語っている。
「彼がこれまでこの問題のために注ぎ込んだ政治資本を考えると、彼が立場を転換させるということはありえない。」
二年前に首相の座に就いて以来、安倍は過去10年以上にわたる軍事費削減の方向を反転させ、中国の領海侵犯と北朝鮮の核兵器プログラムに対して強硬姿勢を示してきた。
これらの問題は日本の安全と領土の保全に直接かかわる地域的な問題である。しかし、複数の専門家によれば、安倍は最近の中東歴訪中に、2億ドルの人道支援に加えて、ISISに対する軍事作戦を公然と支持するという無謀な挑発行為をとった。
中野晃一(上智大学教授・政治学)は、日本人の多くは同胞の死のあと、安倍外交に対してはこれまでより用心深く対応するものと見ている。
しかし、かれはこう付言している。「政府はこれから先、この事件を根拠に、軍事活動についての憲法上の制約を解除することの必要性が一層高まっており、『テロとの戦い』においてこれまで以上に大きな役割を引き受ける必要が出て来たと主張することになるだろう。」
「過半の日本人がこの問題について『なんだかわからない』『自分には関係ない』という態度をとる一方で、相当数の日本人はこの考え方に同意するだろう。」
にもかかわらず、昨年末の総選挙で、歴史的な低投票率で彼を政権の座に送った有権者たちが安倍の最大の敵になる可能性もある。
「日本の軍事的役割を拡大することを求めた法律はこれから議会を通過しなければならない。だが、近年の事件を考えると、法案は簡単には議会を通らないだろうし、議案の審議過程で日本がこれから向かおうとしている方向についての国民的な議論が巻き起こることになるだろう」とMullinsは述べている。
安倍は今のところは憲法9条の即時改定については断念している。国民投票で過半数をとれる確信がないからである。
その代わり、彼はアメリカの起草した文書を再解釈しようとしている。彼と彼の率いる保守勢力は、70年に及ぶ平和と繁栄にもかかわらず、憲法こそが戦争の歴史についての『自虐史観』を創り出した元凶と見えているのである。
憲法の再解釈と、関連法制の整備によって、日本の軍隊は戦後はじめて外国領土での戦闘が可能になる。ただし、それは同盟国が攻撃を受けたときにそれを防衛する場合に限られるが。
少なくとも、安倍は人質危機に対する日本の危機管理能力を強化するだろうと見られている。2013年はじめのアルジェリアでの起きたテロリストによる攻撃に際しては、救出のための軍事行動が法律で禁じられていたせいで、対処の不適切さが露呈したからである。
しかし、外交的な冒険主義は結果的に日本をアメリカの「副保安官」にしてしまう可能性があるが、そのような冒険主義に対する世論の傾斜はこのところ少しは緩和しているようにも見える。
それに、自民党内のハト派勢力が、安倍が70年にわたる平和主義的ドクトリンを根こそぎにするのを座視しているという保証はない。
「斬首のニュースを受け止めて、恐怖感を覚えた後に、世論がどういうふうに振れるかは予測できない」とJeff Kingstonテンプル大学教授(アジア研究)は述べる。
「安倍支持の旗の下に結集するという動きがあるだろう。彼がこの危機を無駄にするはずがない。今期の国会審議を利用して、日本の自衛隊の活動強化とアメリカとの安全保障上の協力の必要性を言い立てることだろう。しかし、大衆は安倍の安全保障政策と、反ISIS勢力に同調することの明らかなリスクに対して、深い懸念を抱いている。」

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2015年02月05日 12:45 に投稿されたエントリーのページです。

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