中野晃一先生の安倍政権論

2014-03-04 mardi

Australian national university の出しているAustralia and Japan in the region という英字媒体の3月号に上智大学の中野晃一先生が寄稿している。原文が英語なので、例によって訳文を付す。
中野先生の状況解釈のすべてに私は同意するわけではないが、今日本で起きていることが安倍晋三という人政治的個性に帰しうるような属人的な出来事ではなく、長期的な政治過程そのものの変化のうちの現象であるという意見には深く同意する。
(訳文はここから)
2012年12月に安倍晋三の自民党が政権に復帰して以後、日本が右傾化しているからどうかについては活発な議論が展開されている。ある人々は、安部の側近を含めて、彼はアベノミクスの三本の矢の追求だけに目的を限定しているプラグマティストであると主張する。また別の人々は第一次政権以前からの全期間を通じて彼がなしてきた歴史修正主義者としての言動の長大なリストを根拠に、彼を極右的な見解を持つ「信念の」政治家であると見なしている。
2013年12月、彼の政権発足1年を期しての彼の突然の靖国神社参拝によって、この議論は後者の見解に最終的に決したように思われる。しかし、今でもまだ安倍と彼の擁護者たちはこの参拝は戦死者を慰霊し、不戦の誓いをなすためのものであると主張して、安倍が軍国主義を復活させようとしているという批判を退けている。私は安倍と彼の友人たちのこのような主張は不実なものであり、彼は日本を右傾化させているという判断に与する。それだけにはとどまらない。私の考えでは、日本政治の右傾化傾向はすでに20年前から始まっている。言い換えると、安倍の右翼的な政策はここ何十年かにわたって日本の政治を変容させてきた右傾化傾向の一部(それが重要な一部であるにせよ)に過ぎない。安倍が政権にある間に日本をさらに日本を右傾化させるにせよ、しないにせよ、この右傾化傾向は彼によって始められたものではなく、彼が退場すれば終るというものでもない。そのことが重要なのである。