12月3日の記者会見の様子を今回も集英社の伊藤君が文字起こししてくれました。
いつもありがとうございます。
僕は行けませんでしたが、平田オリザさんや平川克美くんや安藤聡さんも行ってくださって、たいへんな熱気で、メディアも驚いていたそうです。
では、その熱気を感じてください。(文中の強調は内田によるものです)
■2013年12月3日特定機密保護法案に反対する学者の会記者会見@学士会館■
●司会挨拶●
司会・佐藤学(学習院大学教授、教育学): 特定機密保護法案に反対する学者の会、本日2006名の学者の声明をもって、私どもで記者会見を行いたいというふうに思っております。
最初にですね。第一列に並んでいる方々のご紹介をちょっとご紹介を致します。
向かって左側から、東京大学教授,政治学がご専門の宇野重規先生。続きまして、慶応大学教授の小熊英二先生。それから専修大学教授の廣渡清吾先生。それから立教大学名誉教授の栗原彬先生。それから大阪大学教授の平田オリザ先生。東京大学教授の大沢真理先生。それから、東京大学教授の小森陽一先生であります。本日司会は、私、学習院大学の佐藤学が行います。専門は教育学です。
去る28日ですね。11月28日、私ども、特定機密保護法案に反対する学者の会として31名でございましたけれども、連名で記者会見を行いました。報道関係の方達に広く報道して頂いたことを心から感謝申し上げます。この31名はノーベル賞受賞者2人(白川英樹、益川敏英)を含む、さまざまな学問領域の中で、今日の事態に非常に危惧を抱いた学者の声として発表したわけでございます。市民としての学者の声と言った方がよろしいでしょうか。それまで、各学会等々ですね。法学界とか、あるいは政治学関係で開かれた等々の学会意見に於いてはさまざまな取り組みが行われましたけれども、学会を横断的に行うという意味で31名の声明は意味があったというように考えています。ちょうど強行採決が行われた2日後でございました。そういうこともございまして、私どもも緊迫した中で声明を発表することができました。
そのときですね。当初、率直に申し上げて予定していなかったんですが、その28日頃ですね。その当日頃から、賛同人というのがどんどんどんどんメールに飛び込むような事態になりまして、急遽、28日の場で、第二次発表を行おう、と。12月3日、本日ですね。午後4時まで、この声明に賛同する方々を募って、第二次発表を行おうということを急きょ決めまして、今日に至ったわけでございます。わずか5日間でございました。そのわずか5日間の間に、ご覧頂きますように、2006名の学者の方々、さらには、大学院生、学生多々、あるいは専門職関係の方々の市民の方々を含め、このほかに483名の方が、本日の正午までですね。賛同頂きまして、本日の記者会見に至ったわけでございます。
非常に短期間でありながら、非常に急速な声が上がっていることをまずご理解頂きたいと思います。それほど、声を上げなかった方々も含め、我々、学問に携わるものは、今日の事態に極めて危機感を抱いています。
戦後最大の民主主義の危機というふうに私たちは呼んでいるわけですけれども、そういう危機感を抱いて本日に臨んでおります。なお。私どもの後ろにいる方々は、この賛同人の2006名の中から、本日一緒に列席をすることでご一緒させて頂いている方々でございます。それでは、まず、私の方から声明文を読み上げます。そのあと、何人かの方々に、発言を求めていきたいというふうに思っています。
(声明文読み上げ)*声明文は特定秘密保護法に反対する学者の会公式サイトをご覧ください。
●賛同人の見解●
佐藤学: それではですね、この賛同に、本日からですね。前回は31人の会でございましたが、本日、この場をもってですね、2006人の会というふうにさせて頂きたいというふうに思います。最初にですね、この31人にも加わって頂きました栗原彬先生の方から一言お願いしたいと思います。
栗原彬(立教大学名誉教授、政治社会学): 栗原彬と申します。わたしは政治社会学者ですけれども、学者としてよりも一人の市民としてこの法案に反対致します。その理由を申し上げます。
この法案というのは、この私たちの声明の中にもありましたように、特定秘密の範囲を無限にたてかえにすることはできる訳ですね。それで、その結果、つまり、例えばテロの抗議を巡って、昨今話題になっていますように、行政府が恣意(しい)的に、これを取り締まろうと思えば、もう簡単に取り締まりができる。そういうふうな法案である訳ですね。
これは、私たちがよく知っている山口県の上関町の上関原発を巡っての中国電力の最近の対応が、なんといいますか。行政府とか企業と、それが加害者であって、それで市民が被害者であるという、そういう構図が逆転しているんですね。これは30年間にわたって、原発立地に反対してきた人たちがいる訳ですけれども、その中から4人の市民を選んで、それを裁判に訴える。つまり企業が、工事を妨害したと、そういう理由をくっつけてですね。異議申し立てをする市民を訴訟に持って行く。こういう逆転現象ですね。これをスラップ訴訟というふうにいう訳ですけれども、これと同じ事がこの本案によって行われようとしている。
それで、監視されるべきなのは、行政府であるのに、逆に、市民が、とりわけ、異議申し立てをする市民が、取り締まりの対象になっていく。そういう逆転が行われている訳ですね。しかも上関原発のように、訴訟に持って行かなくても、取り締まりができるという、ですね。そういう恫喝(どうかつ)的なものです。
実際、これは公聴会の意見を無視する、それから国際的な人権団体の異議申し立てを、また無視する。これはある意味では当然であります。なぜならば、そういう市民の意見を聞いて、行政府が自分たちの政策を変えていく、法を変えていくというふうなことではなくて、逆にこの法っていうのが、が市民を取り締まる。そういう方向に向かっている。そういう逆転した法って言いますか、そういうものですね。
これは現代の治安維持法です。つまり、これは、やっぱり治安立法なんですね。治安立法なんですよ。それで、しかも、これはナチの全権委任法に限りなく近いんです。つまり行政府が、これが特定秘密だ。これは特定秘密に触れているというふうに判断すれば、何でもそれが取り締まりができるっていうね。ちょっとものすごい法な訳ですね。
こういうふうな法を認める訳にいかない。市民として、この異議申し立て、デモンストレーションとか意見表明っていうのはですね。こういう公的に認められている市民参加の、私たちの権利の一端なんですよね。これが取り締まりの対象になるような、こんな法なんて冗談じゃないと言えます。私は、これは反対です。
佐藤学: それでは宇野重規さん。次にお願いします。
宇野重規(東京大学教授、政治学): 私は、このような場に立つ資格はないものと思っておりますが、2000人を超える全国の研究者と共に、声を上げたい、意思表示をしたいという一念で、この場に参りました。私は政治学者です。政治学者としていろいろな問題点に関してより個人的に意見を持っておりますが、必ずしもこういう形で意思表明をしようとは思いません。ただ、私、今回に関しては、これは政治、あるいは民主主義の基盤そのものを危うくしかねない。こういうものを座視するならば、それは政治学者として自らの任務を座視することになると思って参りました。
今年になって私は、差別撤廃の東京大行進というヘイトスピーチに対抗するデモにも賛同致しましたが、あれは、要するに民主政治に於いて、所属、意見の違いのある人間を認めない、おまえはいなくなれ、という。これは民主政治の基本ルールの違反である。これを許す訳にはいかない。
そして今回、この特定機密保護法案とはまさに政治における、あえて言えば政治における真実というのは、どのようにして明らかにされねばならないのか。さらに三権分立。こういう政治における基本的な土台がこの法案によって危ぶまされるのではないのか。そのような危惧をどうしても私は否定することができません。政治において、秘密が必要だ。すべてを公開することはできない。このように政治家は言います。確かに、少なくとも同時代的には公にできない、そういうような秘密もあるのかもしれません。
しかしながら、私は、これは極めて限定的に解釈されるべきだと思っております。これが無限に解釈されたとき、市民が政治を判断する上で最も重要な情報、これが市民に与えられない。そのような中で政治に意思決定を行われるということは、我が国の歴史を振り返るまでもなく、大きな不幸の原因となろうとしている。その意味で、無限に秘密を拡大することは許されない。さらにそれは、仮に同時代的には公開できないとしても、それは歴史の中で必ず検証されねばならない。その意味で、果たして、この法案を推進する政治家たちが、自らが歴史において、裁かれる。歴史という法廷の前に立つ。それぐらい、どうしても秘密にしなければいけない。自分は政治的生命を賭けても、そう判断する。それだけの覚悟があって、やっているのか。そうではなく、ただ、普通にやっていればいい。当たり前のことをやっていれば処罰されない。こういうふうに、多くの政治家は言います。しかし私は何が普通か、何が当たり前かを、政治家によって判断されたくはありません。
もう一つ、権力分立です。私は特に政治学の中の政治思想史を研究しております。政治思想史を研究している人間として、権力というものは、他の権力によってチェックされない限りかならず暴走する。この政治学の教えを大切に思っております。
今回の法案、もしこのまま通りますと、一つ目はまず、立法権の側からによる、例えば国政調査権、あるいは議会に於いて秘密をもし明らかにした場合、それに対する議員の付帯特権を含め、果たして立法権が、行政権の暴走を防ぐことができるのか。行政権が秘密立法的に判断するかつ、それをチェックするシステムは行政権内部にしかない。そして最終的にそれが司法の場に於いて、果たしてもたらされるのか。そして司法の場に持ち込まれた時に、果たしてそれは、秘密という名の下に、いろいろなところが黒字で消されたままになっているのではないか。それが権力というシステムの崩壊につながりかねない。
そういう意味で私はこの三権分立というのを、昨今の風潮ではますます軽視されがちですが、大切にしたいと思っております。そのような意味でも私はこの法案は、このまま通すことを許す訳にはいかないと思っております。以上です。
佐藤学: 続きまして、大阪大学の平田オリザさんです。
平田オリザ(大阪大学教授、劇作・演出): 大阪大学の平田です。諸先輩、専門の方々を前にして、私がここに座らせていただいているのは、私が学術の世界と芸術の世界、両方に籍を置いているからだと思っております。私たち芸術家はよく、炭鉱のカナリアに例えられる訳ですけれども、悪政が広がる時、一番最初に表現の場を失うのが、私たち芸術家です。
この演劇の世界に昔から道化というのがよく出てくる訳ですね。この道化っていうのは、「王様は裸だ」と秘密を、おちゃらけながら、暴いたりするのが役割なんですけれども、それで大様の癇(かん)に触れて、よく首をチョンッとはねられたりする訳ですけれども、これは道化が生きられない世の中みたいなのは、やっぱりよくない訳ですよね。そういうことは社会にどうしても必要な存在だったと思っております。
世の中の多くの方は、特定秘密保護法案、これが通ったからといってすぐに何か、その圧迫されるようなことはないだろうと思われているところもあるかもしれませんが、私は今日、大阪大学から来ておりますので、皆様もご承知のように、大阪市、大阪府は、ですね。もうこの2年間、圧政の状態にある訳です。
例えば、先週ある大阪市役所の職員から、非常に厚い、長いお手紙を頂きました。便箋7枚くらいの封書です。なぜ封書なのかご理解頂けますよね。要するにもう、大阪市、大阪府に於いては、それが個人のアドレスであってもメールは検閲される可能性があると、大阪市、大阪府庁の職員は、もう萎縮をしてしまっている訳です。こういう状態がもうすでに起こっている。
これがこの、秘密保護法が通れば、これが加速されて、要するに行政で、要するに学術は芸術にあるいは表現の世界との重要な交流というのも、ほとんどなくなって、今先生方がおっしゃられた、私たちがその行政をチェックする。あるいは行政が暴走したときに、それに対して異議申し立てをする機能というのが、明らかに失われる。失われるどころか、その萌芽(ほうが)さえも、摘み取られてしまう。萎縮させられてしまう。そういう現状にある大阪の人間としては、この法案は非常に危険であると思っております。これに反対し、抗議したいと思います。
大沢真理(東京大学教授、経済学、社会政策研究): 東京大学の大沢と申します。経済学部出身の社会政策研究者です。近年では、所得格差や貧困の問題に発言をして参りました。その経験から申し上げます。つまりですね、貧困率。貧困の程度というような、権力者にとっては往々にして不都合なデータが、いかに長年の間封じられてきたかということを、身をもって痛切に知っているという立場から、やや特定秘密保護法案というスペスティックなテーマにしたら広げすぎているかもしれませんけれども、申し上げたいと思います。
それは今、平田さんがおっしゃった、窓口の、一線の役人を萎縮させ、ガードを強めさせるという事が、特定秘密というような、おどろおどろしいと、一般市民の方は思われるかもしれません。ですけれども、そのコアの秘密を取り巻いて、幾重にもいかに不都合な例だというのが封じられていくかということを知っているからでございます。
貧困率については、そもそも、「調査をするな」という圧力が研究者に対してはかかっておりましたし、国が集めた統計の中から計測をしようと思っても、その計算をするなという圧力が、公然・隠然と絶えず掛かっておりました。それから、国際機関や研究者が行った貧困率の計測に関しては、「統計が悪い」という批判、「使っている統計が間違っている」という批判が行われております。国会答弁も行われました。しかし、これは白を黒とまではいわなくても、実は緑のデータを赤と言いくるめてでも、こういう貧困問題を直視したくないということが、長年、60年以上続いてきた。この風向きが変わったというのは、民主党政権が発足をしたら一ヶ月のうちに厚生労働省が貧困率を計測して、大臣記者会見で発表をした。それから生活保護基準以下の所得しかないのに、生活保護を受けている人は、そのうち何%しかないかというようなことも、厚生省・厚生労働省は60年以上計測してきませんでしたけれども、この計測というのもやられることになりました。やっと風穴があいたと思った間もなく、今の状況ですから、こうやって一度風穴があいて、また呼び戻しという中で、一線の窓口のお役人たち。それからそのお役人たちと接触をする研究者の中でも管理的な立場にある人たちが、いかに萎縮していくかということは、もう容易に想像がつくかと思います。
このことに限らず、研究、あるいは大学教育の世界で、最近、ボトムアップよりもトップダウンというものを強く進めようという動きが、非常に急テンポで進んでいます。高等教育、それからそれと結びついて切り離せない学問研究というものに対して、非常に圧力が掛かる恐れがあるということを感じる中で、この特定秘密保護法案は何としても廃案にしていかなければならないと考えて賛同人になりました。以上です。
佐藤学:それでは、小熊英二さんです。
小熊英二(慶應義塾大学教授、社会学): 3つのことを申し上げます。
第一にこの法案は不備が多く、外交や防衛の情報を扱った実務経験者からも、これでは外交・防衛の交渉に繋がらないという批判があること。
第二に、この法案が半世紀以上を規定するにもかかわらず、あまりにも審議・議論が形式的、かつ拙速であり、議論が深まっていないこと。
第三にこの法案を運用する可能性のある政治家の方が、非暴力でのデモンストレーションをテロと同一視するような感覚でいるとすれば、運用にたいへんに不安が残ると、以上のことから反対に表明をすることに致しました。なお、(12月)5日と6日の、国会の正面の所で抗議集会が開かれる事が、外で詳細が配られますので、受け取って帰って頂ければ幸いです。
佐藤学: それではですね、続きまして、東京大学の小森陽一先生、お願いします。
小森陽一(東京大学教授、文学): 私は文学研究者です。文学研究は、なによりも、言葉を自由に使って表現する事が前提になります。そしてその事はまた、民主主義の重要な前提として、今の日本国憲法の前文の第一文で強調されていることを改めて思い起こす必要があると思います。つまり自由をもたらす恵沢を闊歩(かっぽ)するということが政府の行為によって二度と戦争の起こることのないように決意するということに繋がっている。この文脈が、私は、日本国憲法の起草の中で、最も重要な指標のひとつだ、というふうに考えています。
しかし、私どもが出した声明にもあるように、この特定秘密保護法は、取材・報道の自由、表現・出版の自由、そして学問の自由。つまり、私たちが憲法第二十一条で保障されている民主主義の一番根本にある、同時にまた、日本が戦争を遂行し続けた大日本帝国憲法下において、治安維持法が維持されていた体制において、とことん権力によってつぶされ、命まで奪われていった、そうした表現の自由を明らかに踏みにじるものだというふうに考えて、私は、文学という自らの専門の立場からも、この特定秘密保護法を断固として廃案に追い込みたいと思います。
そして何より大事なことは、3.11以降、多くの普通の人たちが、自分たちの思いが、立法府で実現されていないと思えば、直ちに立法府に駆けつけて発言をする。また行政府がきちっと自分たちの意向を代表しないのなら、首相官邸前で発言する。そして司法がおかしい判決を出したら、直ちに抗議する。こういう直接民主主義的な当たり前の行動が、行われ始めている中での、この特定機密保護法は、明らかに声を裏切っている。すべての主権者である国民を圧殺する、そういう法律に他ならないと思います。
佐藤学: それでは廣渡先生。
廣渡清吾(専修大学教授、法学): 廣渡でございます。私は法律はやっておりますので、法案を読んで、ほとんどもう、欠陥商品なので、いちいちを取り上げると、解釈にきりがない。これについては、刑事法学者の声明がすでに出ておりまして、詳細に分析をしておりますけれども、特徴的な、私が今、特に遺憾だと思っていることは、政府の活動によって政府が保有する情報、あるいは政府の活動から生ずる情報は、国民のものであるという原則が、情報公開の原則の下で確立したはずなのです。
それで、小熊さんがおっしゃったように、今、政府が外国と交渉しているとか、いろいろなクリティカルな状況の中で、秘密にしなければならない事項は、全くない訳ではなくて、あると思います。
けれども、原則と例外を逆にしてはいけないんですね。
ですから、なぜ情報公開の原則があるか。それは民主主義の基本であるからです。したがって、国民の知る権利との調和を考えながら、もし、守らなければいけない秘密があるとすれば、非常に厳格なシステムを作って、秘密の保護をはかるというのが普通の考え方です。
諸外国の立法はそういう考え方を元につくられていると思います。しかし今回の特定機密保護法案は、そういう水準に全く乗らない法案であって、私は、提案すること自体が間違っている法案だと思います。
そこで、憲法の問題とちょっと引っかけてお話ししたいと思うんですけれども、一番誰が見ても問題なのは、これは処罰をする法律ですね。秘密を漏らしたり、秘密にアクセスしようとしたりする人を処罰する法律です。ですから、刑罰を科する法律です。
日本国憲法の三十一条は、法律の手続きによらなければ刑罰を科すことはできない。いわゆる罪刑法定主義の原則を定めています。これは、この特定機密保護法案はどういうシステムをそこで採ろうとしているか。行政の長が、秘密を特定すると、それで一つの犯罪構成要件ができる事になっています。国民は何が特定された秘密か、わかりません。「不特定特定秘密」です(苦笑)。したがって、これはもっぱら、国民に対する関係、あるいは国会に対してもそうですし、裁判所に対してもそうですけれども、行政、これは政府が都合の悪いことを隠すための法案になっている訳ですね。それでひとつの犯罪構成要件ができることになっています。そして、犯罪構成要件が不明確なままで処罰をしようとしている。従って、法律学者は、この法案は日本国憲法31条に違反している、というふうに言ってます。
政府の活動を国民が批判的に検証するというのは、これは民主主義の基本です。ですから、情報の管理は、さっきから何度も皆さんおっしゃってるように、民主主義の基本です。従って、これにふさわしいものでなければならない。全く落第の答案だと思います。
最後にもうひとつ。この憲法違反の法案が、このまま参議院で可決され、日本の法律になったら、これは、憲法改正をせずに憲法を改正をしたのと同じことになりますですね。憲法に違反した法律が国会で通ったら、それは憲法改正しないのに憲法改正したことになります。
ちょっと話が飛びますけれども、安倍内閣が憲法9条の解釈を変えて、集団的自衛権を認めようとしています。これは元の法制局長官、歴代の法制局長官も、それは憲法9条を無視することになると。集団的自衛権を認めるならば、憲法9条を改正するのが筋であると言っています。従って、明示的に憲法を改正しないで、憲法の内容を形骸化するということに、この特定秘密保護法案も、集団的自衛権も、同じ筋道のものになると思います。実は、これが、つまり、明示的に憲法を改正しなくても、憲法を実質的に形骸化させるという道が、麻生副総理が言った、「ナチスの手口」です。以上です。
佐藤学:もう、私もひとことだけ。特定秘密保護法案が現実に発効する。そういう事態をちょっと想定してみてください。一番発効する可能性が高い状態、これは、集団的自衛権の行使です。その集団的自衛権の行使、つまり、日本の自衛隊が海外で戦争を行う、あるいは、戦争を誘発してしまう、そういう事態が生じたときに、それがいったいどういう根拠で、その判断がなされてるのか、どういう情報に基づいてなされているのか自体が、国民には知らされない。そうしますと、国民の知らないところでですね、あるいは、国民の意思決定の関わらないところで、戦争を起こすことが可能になるわけですね。また、そこに巻き込まれることが可能になるのでありまして、これは最も、今回の特定秘密保護法案の、危険性の一番頂点にある問題だろうというふうに理解しています。
それではですね、これだけの参列者がいらっしゃったものですから、全員というわけにはちょっといかないんですけれども、何人かの方で、ぜひここでとおっしゃる方、挙手いただけますか。短くお願いします。2名から3名でお願いしたいんですが。はい。所属とお名前お願いします。
●参列者意見●
タケウチ(科学者会議学会):科学者会議学会のタケウチと申します。なんか、ちょっと1年休会になって名簿には入ってませんけれども、科学者会議学会のタケウチと申します。私は、手短かに言いますが、この法案というのはですね、まさしく「亡国の法案」である。国を滅ぼす。それは3点ある。
1つとして、今まで諸先生方が言ってきましたけれども、これは民主主義を根本から否定するものであるということ。
2つ目として、多分、もしこの法案が通るということになるとすればです、なるとすればですよ、日本から離れる人がどんどんどんどん増えてくるでしょう。そういう意味の亡国です。
あと、第3点としまして、これはあってほしくはないのですが、理性ではなくてですね、数の力で、数の暴力でもって決めた法案が通るっていうことになると、理性が蹂躙されるということになります。ということは、極左と極右のですね、テロの応酬が将来出てくることが十分考えられる。これ非常に内戦状態に近いようなですね、危惧すべき状況です。この法案っていうのは、この3つの点でですね、まさしく亡国の法案であって、デモクラシーの法案ではありません。以上です。
佐藤学:それでは続いて、お願いいたします。よろしいでしょうか。ぜひ、遠慮なさ…はいどうぞ。
木下ちがや(明治学院大学非常勤講師、政治学):木下ちがやと申します。政治学を専攻しています。私はこの3年間、ずっと、脱、反原発のほうに関わってきたんですが、その視点からして、何人かの発言がありましたけど、まさに今回の法案と、そしてまぁ、石破さんの発言に対してですけども、やっとですね、この日本の社会の中で少しずつ、本当に直接、自分で声を上げていくっていうことをですね、地道に積み上がったきたわけですね。本当にそれをですね、真っ向から突き崩すっていう内容に、ますます、時間が経つごとに明らかになってくるっていうのが今の現状だと思います。本当にもうこの数週間、今、特にSNS、ツイッターが発達しまして、いろんな議論がなされてますけども、この2日ぐらい、急速にですね、この法案について危険だという(ことが)、一斉に広まってます。恐らく、この数日に渡って、マスコミの方々も、恐らく、去年の官邸前抗議のように、どんどん人が増えてくる、どんどん人が集まってくるという光景を必ず目にすると思います。ですから、そのことを絶対見逃さないで、それを、そうした民主主義というのを、ぜひこれから数日間、最後の焦点の視点で取り上げていってほしいというふうに強く要望します。
佐藤学:では、あと、おひとりぐらいということで、よろしくお願いします。
岡田憲治(専修大学教授、政治学):専修大学の岡田憲治と申します。政治学を専攻しております。短いメッセージをひとつだけ、贈らせていただきます。この会合を報道なさっている報道関係者の皆さん、マスメディアの方々は、我々の友人です。言葉を使って、世界をきちんと切り分けて、世界に何があるか、どんな問題があるか、そのことをえぐり出して、共に考えるための素材を提供する、言葉をめぐって働く友人です。あなた方が、この世の中に、なぜ存在する意味があるかということをもう一度考えて、お互い励まし合いながら、この問題をきちんと世界に伝えてもらいたいと思うし、我々もそのために協力するので、頑張ってほしいのです。以上です。
●報道機関質疑応答●
佐藤学:以上、限られた声ではございますけども、2006名の声の一端というふうに考えております。最後の発言にありましたように、まさに我々は、なぜ我々が学者でありうるのか、また学問の自由というものを欲しいのか、それはどこに由来するのかということを、本当に考えつつ、詰めた結果としてですね、今日ひとりひとりが声を上げた、というふうに私は理解をしております。それではですね、報道の方々のご質問にお答えする時間に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。
東京新聞:東京新聞の●●●と申しますけれども、前回の会見のほうにも参加させていただきまして、あのときは出席者の皆様の名前に驚いたんですけど、今日は名前ももちろんですけど、この2000名という、この厚みに驚いておりますけれども、1週間でこの2006名の方が、こういう賛同を示されたという、過去にはちょっと思いつかない出来事だと思うんですけども、このことの持つ意味というの、特に、学者の方がこれだけ敏感に反応された、ということについての持つ意味というのを教えていただけますでしょうか。
廣渡清吾:すでに先ほどからもご発言でもありますように、学問研究の立場からすると、政府の活動を材料にしながら学問研究をする、これはもう成り立たなくなりますね、はっきり。もちろん、そういう直接的な利害関係、利害監視にあり、学者が立ち上がっているということでもあると思うんですが、私は一番大きなものは、「不安」、不安ではないかと思います。この国が、いったいどういう方向に引っ張られようとしているのか、ということについての非常に大きな不安が、これは市民も含めてだと思いますけれども、学者の中にも大きい。
皆さんご承知のように、安倍政権は4年間の間、「全権委任された。私たちが皆さんの安全を守ります。国を発展させます。ですから私たちが言うように、皆さんについてきていただければ」という発想で、今、政策を展開していると思うんですね。けれども、一回の選挙で政権が誕生したときに、政権に与えられているのは、選挙を戦ったときの公約についての信義であって、ひとつひとつの提案については、その提案の都度に、国民にきちんと説明をして、信を問うということが必要だと思います。今回のやり方は、明らかに、そういう立場を放棄して、安倍さんが「この法案は国民を守るものです」。どこで国民を守るんですか。それについて具体的な答えは聞けているでしょうか。そこに対する不安です。つまり政権の政治姿勢に対する根本的な不信が、これだけの短期間に声明が集まった一番大きな理由だと思う。
そして、直接的に、学問はもうできない。政権の活動を評価し分析し、これが社会科学の役割ですよね、基本的な。政治なんかでも本当にそうです。経済学でも同じです。先ほど大沢さんがおっしゃったように、データは取れない。政府が集めてるデータを利用できなくて、どうして政府の活動について、学問の立場から、民主主義的な調査をし、批判をすることができるでしょうか。これは、ほとんど全ての学者に共有されていて、今日は2006名でしたけれども、まだ届いていないので、この数です。多くの学者に、私たちの呼びかけが届けば、もっともっとたくさんの数が集まっています。しかしそれにしても、この短期間に2000名以上の数が集まったのは、私にとっても、とても大きな驚きで、この驚きは、いかに皆さんの今の政治の動向に対する不安が大きいのかということを、如実に示していると思います。
佐藤学:ひとこと、私のほうからも。我々学者はですね、こういうこと、政治的な…非常に苦手でございます。これほんとに、ひとつひとつですね、メールで送ったりですね、切り貼りしながら、ほんとにこの5日間はですね、不眠不休の状態でございました。その中でですね、私個人が感じたことを申し上げますと、今回の科学者、学者たちの2006名の声明、これは新しい要素を持っていると思います。政党が動いたわけではございません。学会が動いたわけではございません。皆、個人です。学者ひとりひとりがですね、ひとりの市民として、また、学問に携わる者の良識として声を上げたということでございます。今も届いていると思います。そのような形で、これほどのですね、声が上がったことを重く受け止めていただきたいというふうに思います。続いてご質問をお願いします。
毎日新聞:毎日新聞の●●●と申します。この問題をですね、我々も伝える上で、非常にやっぱり、先ほども何度かお話出ましたけど、自分の生活に関係のあることかどうかっていうところで、なかなか、こちらも表現するのが難しいし、なかなかまだ伝わりきってないという感じを受けてるんですけども、その辺りを、先生方はですね、ごく普通の生活をしている方に対して、なんていいますか、呼びかけるとしたら、どういうふうに呼びかけられるかなと思いまして、その辺りを聞かせてください。
佐藤学:それでは、これはですね、文学とか、やっぱり演劇とかの世界の方にお伺いすればいいと思うので、まず小森先生、それから平田先生に。
小森陽一:この前も記者会見で申し上げましたが、私たち主権者である国民が、国家権力に縛りを掛けるための最も大事な情報、つまり、国家の情報が隠蔽される法律なんです。だから「国家情報隠蔽法」だというふうに捉えなければならないし、隠蔽された瞬間、私たちは主権者じゃなくなるということですね。だから、国民の主権者性を抹殺する法律でもある。じゃ、平田さん。
平田オリザ:もう冷戦の時代ではありませんので、オール・オア・ナッシングではないと思うんですね。今回のことに関しては、相当保守派とみられていた方たちでも、相当の、この法案に対して疑問を持っていらっしゃる。で、2つ、やはり分けて考えたほうがいいと思うんです。確かにこの法律がですね、戦前の治安維持法のように、ものすごく圧政で機能するのは、「ない」かもしれないし「ある」かもしれない、としか言いようがない。で、それが「ない」ように、望むしかないわけですけれども、しかし「ある」可能性がある。
しかしですね、先ほども申し上げたように、現実にはですね、真綿で首を絞めるようにですね、公務員たちの、まず、表現あるいは、データの出し方っていうのを、もう鈍るっていうことを、もう大阪で実例として出てきている。そのことをですね、ぜひ実感として、持っていただきたいと。ま、これ、ほんとに関西にいないと、ちょっと分からないところがあるんですよ。もう、ほんとにね、なんというか、「ものを言えば唇寒し」って、あぁ、こういうことなんだなぁっていうのがですね。僕、たまたま東京の人間で、今、大阪にいるんで、すごく温度差があるんですよね、東京にいるときと大阪にいるときでですね。これはなかなか伝わりにくい。ほんとに、マスコミの方にもですね、ご苦労があると思うんです。マスコミの方もですね、多分、大阪市長の方たちから、そういう話を聞いてると思うんですね。「嫌~な感じ」。「嫌~な感じ」としか言いようがない。そしてすごく高圧的に。
ま、今でこそね、もう橋下さん、そんなに力ないですけれどもね。2年前、皆さん、ひどい目に遭ったわけでしょ。それを思い出していただきたいんです。どんなふうに封殺されたか。どんなふうに恫喝されたか。あれが合法的になるんです。局所的なことではなく、国政で当たり前のようなことになるんです。それがいいんですか?っていうことなんだと思います。なかなかこれがですね、そうなってみないと実感ができないものなので、まさに、それをなってみないと実感ができないことを表現するのが、私たち芸術家の仕事ですから、それはもう、私たち芸術家にも責任があると思ってます。
佐藤学:では続きまして、ご質問…。
集英社:集英社新書の●●と申します。前回も参加させていただき、非常に危機感を持ったんですけれども、司法に、違憲立法審査権というのがありますね。ちょっと考えたくはないんですけど、仮にこの法案が、通ってしまった場合に、事後闘争的な話ですけど、違憲立法審査権は、どの程度この法律に対する国民主権の防波堤になりえるとお考えでしょうか。以上です。
宇野重規:私、今回の法案が仮に参議院通ったとしても、それで終わりではないと思っております。おっしゃるように、このあとには違憲立法審査権を通じて、憲法違反ということで、この法律を問うチャンネルが残っていると思っております。もちろん、現実にこのまま法案が違憲の判決を受け、無効になる可能性がどれだけ大きいか、と言われれば、(…)としません。しかしながら、チャンネルは少なくとも開かれていると。これが残ってるとされてる以上、ありとあらゆる手段を通じてでも、この法案を廃案に追い込む、これは、長いプロセスだと思っております。
もちろん、これ、法律をつくる側も、そんな危険立法はないんだと言っております。しかし、長い時間経っていけば、どういう人間がこの法律を使うか分からない。要するに、今回の問題というのは、短期間で決着のつく問題ではないと思っております。もちろんこれで廃案に追い込めれば一番いいわけですけれども、仮に廃案になったとしても、また違う形で入れてくるかもしれません。そういう意味で、いずれにせよ、これは長期的な形で問題にしていかなければいけないと思っております。
廣渡清吾:実際に考えて、自公が多数派を占めていて、その自公、与党が提案した法案ですから、何もなければ通る、ということになってしまいそうなので、大変遺憾なんですけれども、今のご質問は、「通ったらどうなるのか」っていうことですよね。通ったら、この法律が発動できないようにする、っていうしかない。
発動できないようにするっていうのは、国民がこの法律にどれだけ多くの批判を持っているかっていうことが示されなければならない、と思うんです。
ですから、今日、今日まだ法案が通ったわけではありませんから、このあとも、どれだけ多くの批判が国会の審議に対して寄せられるかということが、ひとつの決定的なポイントだと思います。
で、もし通って、この法律が適用されて、具体的な案件が裁判所に掛けられ、機密を漏らした、機密に不法にアクセスした、ということで、刑事事件になる。そのときには当然、被告は、この特定秘密保護法が憲法違反であるというふうに争うことになると思います。そうすれば、裁判所はどうするか。特定の審議になったときにですね、「じゃ、どういうことが秘密であるの」という話になる。これは非常に形式的な話だけど、「特定したら秘密だ」と言ってるわけです。「じゃ、どういう秘密を特定したのか」って、「裁判所の前に出しなさい」っていうふうに行政機関の長が言われたときに、「いや、これは出せません」。あるいは、出すとしても、「これこれこれ、こういう内容のフォームで、こういう内容のものです」と言って、具体的にその文章を出すか出さないかっていう争いになると思います。
元最高裁判事の方は、そのときに「インカメラ審査」つまり、裁判所にだけはそれを見せる、その情報そのものを裁判所にだけは見せる。裁判官はそれを見て、本当にこれは法律に基づいて特定するに値する秘密なのかどうかを、裁判所が判断する、ということがなければ、裁判所では審理ができませんが、特定秘密保護法案は、それを裁判所に保証していません。裁判所がそういう権限を持つということを保証していません。ですから、「特定した」ということだけによって、「犯罪だ」とされて処罰されるという可能性があるので、これは罪刑法定主義違反の法律だと言ってるんですけれども、実際にとても困難な戦いになるかと思いますが、でも結局は最終的にこの法律が通ってしまえば、そういう戦いを国民の側でやって、具体的にこの法律が効力を持たないように追い込むしかないと思います。
佐藤学:一度通ってしまえば、法案をですね、無効化するのは大変な戦いになると思うんですね。その意味で申し上げますと、現段階ではですね、(12月)6日に会期末になるってことは絶対に許さない、そういう状況を刻々とつくりあげていくしか方法はないというふうには考えています。続けてお願いいたします。
NHK:NHKの●●といいますが、もう、ひとつのグループというふうには括(くく)れないぐらいの大きな、本当に大変な規模になっていらっしゃると思うんですけど、具体的に今後、おっしゃっていることを実現するためにですね、皆さんとして、皆さんという…どうか…ちょっと括…そういう個々にですね、もちろんいろいろ発信されるところではあると思うんですけども、ご予定というか、考えてらっしゃることはありますか。お願いします。
佐藤学:現在ですね、この特定秘密保護法案に反対する学者の会、申し上げましたように、当初は31名。これだと合議が可能だとなったんですね。もちろん、このように2006名になるにあたっては、合議の上でなっております。31名全員が加わっております。今後のことでございますけれども、これは、この声明の一点で一致している。これですね。この声明に、皆で一致したということでございますので、その限りにおいて行動する、となったんですね。例えばですね、仮に万が一、今度参議院での採決が行われたとするならば、直ちにこれは抗議声明として2006名、もっと増えてくると思いますが、ここまでは皆さんもご協力してくれると思うんです。ですから、私どもとしては、現在、現段階で、現在も届いてると思いますが、どんどんね、数が増えてると思いますが、引き続きですね、この、何名、学者何名のアピールというものを、様々な手段を通じてですね、社会的にアピールするっていうふうに、万が一ですね、採決がなった場合には、その時点で抗議声明を出します。そこまでは考えております。
信濃毎日新聞:すみません、長野県の新聞社で信濃毎日新聞の記者の●●と申します。お伺いしたい点なんですが、一般の市民の方が、例えば反対したいというふうに考えていても、実際に、「じゃあ、どうすればいいんだよ」と、取材をしていて聞かれることが多いんですが、結局、デモやインタビューなんかの形を紙面で掲載することが多くなってしまって、読者のほうとしても、ちょっと飽きられてしまうというのか、またこういう形かというふうになってしまうんですが、その点で、皆さんのほうで、こういうふうに疑問を持った方は、こういうふうに行動したらいいんじゃないか、というような形を、紙面を通して読者の方に助言などあればお願いしたいんですが、よろしいでしょうか。
小熊英二:地元の議員の方の事務所に行ってください。議員さんは、有権者を非常に気にしておられます。地元の議員の事務所に1人でも2人でも、20人30人ならもっと効果があると思いますが、それで、「この法案について、どうお思いなんでしょうか」と。所属政党はともかくとしても、個人としてどうお考えになっていて、お考えを聞かしていただいた上で、「あなたはどう行動なさるおつもりですか」と聞いてみるのが一番早いと思います。
佐藤学:私どもがいい例だと思うんですね。先ほど言いましたように、こういう行動をほとんどやったことのない連中がみんな集まりながら、これまでも何回かは私もセミナー出たことはありますが、これほどの形は取ったことがございません。そこで言えることは、この学者の会と申しますか、実はこの学者の会をモデルに、今あちこちで学者の会とかですね、市民の会とか、なんとか市民の会とかですね、いうのがブログで立ち上がっていて、同じような行動が起こったというのは聞いております。ですから、声をですね、ひとつにつくりあげていくっていう様々な方法があるのだということを、私たちは身をもって示したというふうにご理解いただければと思います。
栗原彬:やはり、地元でデモンストレーションをやる、これはかなり意味があると思います。一昨日、吉祥寺でそういうデモがあったわけですけどね。そういうところで市民の、街の方たちに、これは、「大音量で迷惑になってますか?」、とか、「このデモで恐怖を感じましたか?」って。誰ひとり「恐怖感じました」なんて、ひとりもいませんでした。多分、石破さんだけなんでしょうね、恐怖感じるのは。てことは、何かやっぱり、デモについて後ろめたいことがあるんだなぁっていうふうに思いましたね。実際やっぱり、あちらこちらで、やはり地方でも今はデモンストレーションが起こってるわけでしょ。そういうことが、やっぱり、この法案に反対するっていう、アンケートを取ってみれば、そういう数字になって跳ね返ってくるわけで、これはやはり、メディアの方がやっぱり、それを伝えていただくことがかなり大事なことですけれども。そういうふうにして、市民レベルでね、この反対が拡大していくっていうことが非常に大事だと思います。
佐藤学:おひとり手が上がった。はい、お願いします。
東京新聞:東京新聞の●●です。先ほど、選挙の公約の話が出ていたんですけれども、自民党は衆院選でも参院選でも、国家安全保障会議については、小さく触れてますけれども、秘密保護法案については全然触れていなくて、選挙が終わって半年も経たないうちに、国のありようを大きく変えるような法案について、いきなり出してくるということについての問題点を、ちょっと改めてご指摘いただければと思うんですが。
宇野重規:ご指摘の通りだと思います。しばしば国会議員さん、議会の人というのは、議会外での発言に対して、よくナーバスになります。「自分たちだけが民意を代表して法をつくる権限があるのである」と。「自分たち以外の回路でものを言うのはけしからん」と言うことはしばしばあります。しかしながら、人々は、市民は、みずからの意見を常に表明する権利があります。まして、今ご指摘のように、本来、特定秘密保護法案というのは、何ら公約にも入っていなかった。このような民意を、現在の議員に託した覚えはない、というのが、我々市民の素朴な感想です。そのような意思を表明することは当たり前のことであって、「このような授権をした覚えはない」と。このことを強く示すことのほうが、代議制民主主義をよりよく機能させるものであると思っております。
佐藤学:もう、予定の時間、そろそろ来てるんでございますけれども、ほかにご質問あれば、遠慮なく。
集英社クリエイティブ:集英社クリエイティブの●●といいます。昨日・一昨日の答弁を、国会の答弁を聞いていますと、森(雅子・特定秘密保護法案)担当大臣が、必ず、「これは重層的な仕組みが設けられていて、恣意的な指定とか拡大解釈を許さない」と。そのときに必ず言われるのが、「有識者の意見を聞く」という言葉があります。それで、この2006名の学者としてですね、ここにいらっしゃる方、有識者の方々だと思いますので、それに対して、ひとこと、お聞かせ願えますでしょうか。有識者会議っていうのが、本当に機能するのか、ということです。
廣渡清吾:有識者の意見を聞くというのは、特定秘密、どういうものを特定秘密にするか、といったようなことについて、これ、行政機関の長が勝手にやるんですよね。だから、防衛大臣が勝手にやるし、外務大臣がやるし、警察庁長官がやるんです、勝手に。でも勝手にやられたんじゃ、全体の見通しが利かなくなるので、一応、こういう基準で特定秘密をしなさい、という基準づくりを有識者に聞くと言ってるだけです。じゃあ、有識者会議がその基準通りに特定秘密が特定されているか、ということを審査する権限も何もありません。ですから、そういう意味では、「権威付けをするだけ」の「有識者への意見を聞く」と。つまり、「目くらましのものであって、実効性はない」と。というふうに思います。ですから、「第三者機関をつくれ」という民主党からの意見が出てるんですけれども、これも、政府の外にちゃんと第三者機関をつくるわけではなくて、そこは非常に曖昧にしていますね。「内閣総理大臣がチェックをするときのアドバイスをするための機関です」とか、いろいろ言ってるので、これも極めて曖昧。もし第三者機関をつくるとしたら、法案を撤回して、新しい法案の中にきちんと第三者機関を明示すると、すべきだと思います。
佐藤学:ほか、いかがでしょうか。それではですね、またいろいろご質問がある場合は、こちらの連絡先書いておりますので、いろいろお問い合わせいただければ、我々の担当、個人個人が、それぞれ多様な意見はもちろんあるわけでございますけれども、お答えしていきたいというように思っています。なおですね、この2006名の意味、繰り返しになりますけど、非常に大きいということをご理解ください。ノーベル賞受賞者が2人、芥川賞受賞者の学者の方も含まれております。さらに、国公私立大学の学長の方々も含まれております。そういう広範囲な方々が、この2006名の中に加わり、さらにですね、本来学者ではない、多分取り上げてもらえないんだろうと思いながらも、賛同人の中に加わられた方が483名いらっしゃいます。本日、また列席された方々、私どもとしては30名も列席していただければですね、本当に最高だというふうに思いながら、列をつくったんですけど、ご覧ください。満席でございます。49名ならびに、その学生たちですね、が7名参加されているそうでございます。このような形で、今日の記者会見ができたこと、また、報道の方々も前回に増してですね、2倍3倍という方々に来ていただいたことを厚く御礼申し上げます。
最後でございますけども、まだ日がございます。我々学者の良識、あるいは、今日おいでいただいた報道関係の方々のジャーナリストとしての良識、これを束にしてですね、この事態に向かっていきたいというふうに今は考えております。今後ともですね、我々と報道関係の方々が友好的かつ協力的にですね、こういう問題を議論しあえる、そういう場を考えて、連帯をつくっていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。(おわり)
(2013-12-04 09:36)