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プレス民主でのインタビュー

半月ほど前に、東京で「プレス民主」(民主党の機関誌)のインタビューを受けた。「窓」というコーナーで、党外の人に広報委員長の有田芳生さんがインタビューするという趣向のもの。
たぶんあまり一般読者の目にとまるチャンスのない媒体だと思うし、長すぎたので一部削除されていたので、ここにオリジナルヴァージョンを再録しておく。


「民主党への建設的提言 各界識者に聞く」 最終回 今求められているのは国の統治機構について率直に言えるリーダー
(聞き手 有田芳生 参院議員)

――民主党への建設的提言ということですが、今朝ツイッターで「今や、民主党に言いたいことはない」と書かれていました。まずはその理由からお聞かせください。

内田 2009年の政権交代後の鳩山さんの最初のスピーチを聞いたときは非常に期待しました。「これまでとまったく違う政治になる」「時代は変わる」と。
しかし、沖縄の普天間基地問題をめぐり、メディアは総理の「迷走」を激しく非難して、結局鳩山さんは政権から引きずり下ろされました。僕はどうして基地問題で「できれば国外」という要求をしたことがこれほど同国人から批判されなければならないのか最後まで理由がわかりませんでした。そのあたりから民主党という政党が何をしたいのかが分からなくなってきた。
その後発足した菅政権は当初60%を超える支持率でした。これはおかしいと僕は思いました。菅さんは鳩山内閣の副総理であり主要閣僚だった人です。前総理に致命的な失政があったのだとすれば、副総理だった人にも当然政治責任は及ぶはずです。まったく責任がないというのであれば、彼は副総理だったときに内閣の重要決定にまったく関与せず、政策的影響力を行使しなかったということになる。そういう人は「政治的に無能」と判断するのがふつうではないのですか。だから、その人を次の総理に据えるという党内のロジックがよく理解できなかったし、その人に前任者の3倍の支持率を与えた世論も理解できなかった。

――新しい政治への期待が、普天間基地問題をめぐる「迷走」というあたりから分からなくなったということですが、それは原理的にはなぜだと思われますか。

内田 「迷走」とは、外から見るとやっていることに一貫性がないように見えるということです。当然ながら、鳩山さんにしても、そのつど主観的には合理的な根拠に基づいて政治判断をしているに決まっている。
でも、「何を根拠に政策を変えたのか」を言うことができない場合があります。
安全保障に関する重要な情報は開示してはならない決まりです。一国の総理、国防の最高責任者として、首相に就任した段階で、それまで知らなかった核抑止力にかかわる機密を鳩山さんはたぶん知らされたのだと思います。それによって沖縄の基地についての要求を変えざるを得なくなった。それをまるで思いつきで政策を変えたかのようにメディアは報道しました。そのときに僕はメディアに対してつよい不信感を持ちました。一国の総理大臣の行動が外形的に不整合的に見えた場合にも、その人自身は主観的には合理的にふるまっているという仮説を立てて、その上で「彼はどんな情報を知らされて、政策判断を変えたのか?」を推察すべきではないのですか。

――それは今でも変わっていないどころか、ますますひどくなっている状況です。

内田 そうだと思います。安全保障やデリケートな外交交渉に関する情報はそうそう簡単には国民に開示できない。でも、消費増税や大飯原発の再稼働問題などは、「国民生活を守る」という抽象的な言葉ではなく、なぜこうした政策判断に至ったのかに関して、きちんとデータを挙げ、資料と整えて、合理的な説明をすることができたはずです。
歴史的状況が変わるごとに政策が転換されるのは当然のことです。誰もそれを責めているわけではない。でも、当初に掲げた政策が不適切として下ろされた場合には、その理由を説明してもらわなければ、国民は意味がわからない。為政者には自分の「豹変」について説明する義務があります。
僕は、政権交代によって政策決定のこのわかりにくプロセスそのものが透明化して、「わかりやすい政治」になるのでは、という期待を当初は持っていました。でも、結局、民主党内閣でそれは実現しなかった。それが一番期待を裏切られたことですね。

――同時に、政権交代をしたときには「政治主導」の政治の実現がうたわれました。

内田 今となっては、政治主導というアイディアが未熟でしたね。
霞が関に切り込んで行くというのはいいけれど、そのときに「日本の官僚はダメだ、腐っている」という情緒的な言葉で官僚のマイナス・イメージをばらまいた。短期的には、それで官僚の勢いを殺ぐことはできたでしょうが、結果的には、国民のなかに日本の行政組織全体に対する不信感を広げてしまった。官僚たちも「そこまで言われるなら」ということになり、オーバーアチーブする動機づけが失われてしまった。
政治主導という発想そのものは悪くはないんです。でも、その場合でも、政治家は、大所高所から、長期的な国益を図っておおざっぱな政策を提言し、官僚はそのヴィジョンを実現するための具体的で細密な手順を整えるという、お互いに敬意を持ち合う「分業」であるべきだったと思います。

――政治主導を掲げながらうまくいっていない民主党に至って、政党とはそもそもどういうものだとお考えですか

内田 政党というのは本来はまず政治綱領があり、それに賛同する人たちが集まって組織されるものだと思います。でも、いったん組織が動き出した後は、創設時点では想定しなかった状況の変化、新しい情報に遭遇することになる。だから、結党時の綱領を墨守するだけでは生き残れない。状況に対して開放的であることが求められます。
たしかに、民主党は変化に対して、フレキシブルに対応するという点では、なかなか開かれた政党だったと思います。でも、野田内閣の消費増税や大飯再稼働を見ると、綱領への義理立てがあまりに緩くて、野党との政党的な差異がもうわからない。自民党と政策が違わないなら、政権交代は何のためのものだったのか。
民主党は旧田中派の流れ、自民党は旧福田派の流れ。かつての「角福戦争」の路線対立がそのまま二大政党になったというのが僕の理解です。
旧福田派は新自由主義的な「選択と集中」、都市とエリートへの資源集中による国際競争力の向上、外交的には日米同盟基軸。それに対して田中派は、まず都市と地方の格差解消、地方分権、一億総中流、外交は対米自立。鄧小平と毛沢東くらいに立場の違う派閥が同一党内にあることでかつての自民党はエネルギーを得ていたわけですけれど、それが最終的に二極分解して自民党と民主党になった。これは原理的な対立ですから、それぞれが日本の政党政治における両極を形成すべきだと思います。

――かつてマックス・ヴェーバーが政治家に求められる資質について論じましたが、内田さん的理想の政治家像とはどういうものですか。

内田 政治家、官僚にはそれぞれ役割分担があると思います。国家百年の計という「大きな話」をするのが政治家の仕事。机上の空論でもいいからあるべき国家像を語るのが政治家の本来の仕事だと思います。官僚はいたずらに天下国家を論じるべきではない。どういう国にしたいのかについての国民的合意ができたことについて、それを効率的に物質化してゆく。それが官僚の仕事でしょう。政治家には、多少青臭くても理想論を語り続ける、骨の太さが必要だし、官僚には、その夢に冷水を浴びせて、クールダウンさせつつ、できることから順番に実現してゆく職人的なリアリズムが必要だと思います。

――ツイッターで1970年代のある政治活動家の話を書かれていましたが、60年代でいうと佐藤栄作さん、春日一幸さん、宮本顕治さんとイデオロギーは違っても、ものすごく大づかみの人間の粒はあった記憶があります。それが崩れていったのは日本社会の変貌によるものでしょうか。

内田 今おっしゃったような戦中派政治家は激動の時代を生き延びてきたわけですから、人間を見る眼が違うでしょう。胆力があるし、統率力や包容力がある。実現したい国家像についてはおおざっぱな、でも身体化したイメージを持っているから、個々の政策に関してはいくらでも妥協する。
でも、僕らの世代はもう戦争も飢餓も経験がない。本当の意味で危機的状況を生き延びたということはありません。それは、危機を乗り越えるためにはどのような人間的資質が必要なのかがわからなくなっているということです。
危機に強い人間というのは、要するに、器の大きい人間です。懐が深く、腹がすわっている。でも、平和と繁栄が67年続いて、僕らの世代では人間がぐっと小粒になってしまった。これはしかたがない。平和と繁栄の代償なんですから。いずれ危機の時代になれば、また人間は大柄になります。そうしないと生き残れませんからね。そういう意味で言うと、政治も経済も行政も教育も、社会の根幹のシステムがここまで劣化してくると、大柄な人間が登場してくるだろうと僕は思っています。

――今後の政治的プロセスをどう思われますか。「国民は深い憂鬱(ゆううつ)に沈むだろう」と書かれていました。

内田 あと3カ月で民主党代表選挙ですが、9月の段階で民主党、自民党の増税推進、原発再稼働派が連合し、鳩山さん、小沢さんの旧田中派系が分裂するのではないかと予測しています。第3極として大阪・維新の会が加わる。そういう「三すくみ」の構図になるのではないでしょうか。
そのとき、有権者が選挙で関与できず、水面下での裏交渉で次のリーダーが決まっていくのはあまり愉快ではありません。
総選挙を行うのであれば、最大の争点は、原発推進か脱原発になると思います。
最優先の国民的課題は復興支援と事故処理なのか、それともグローバル企業の国際競争力の向上なのか。それを明確な争点にして国民の信を問うべきです。国民はそれを望んでいます。

――今求められるリーダー像はなんだと考えられますか。

内田 鳩山さんの最大の誤算はアメリカの日本に対する影響力の強さを見誤ったことでしょう。鳩山さんは、日本はアメリカに軍事的に従属しているので、主権国家であれば当然要求できることさえ要求できない立場にある、とはっきり言うべきだったと思います。日本は敗戦国であり、国土を外国軍に長期的に占拠されており、国防や外交について自己決定できる主権国家ではないのだ、ということを明言すべきでした。
今の日本の統治者に必要なことは、「ほんとうのこと」を言うということです。そこからしか始まらない。敗戦国なんだからしかたがないんです。日本は主権国家でない。安全保障、国防・外交に関しては、日本の国益を最優先するという政策選択ができない、と。日本はこうしたいが、アメリカがそれを許さない。だからアメリカに従うしかない、とはっきり言うべきです。敗戦国の屈辱の上にしか国家は再建できません。主権国家でない国が主権国家であるかのように偽装的にふるまうから、政策判断がわかりにくくなるのです。今の日本のリーダーに求められていることは、われわれの国の統治機構について率直に事実を言える人です。

――最後に、民主党はかくあるべしというのを一言でお願いします。

内田 先ほども言いましたが、2大政党制の場合、それぞれの政党の綱領、立ち位置、体質はあまり変えるべきではないと思います。「旧田中派的な政治」の実現、経済成長よりも格差の解消、競争よりも共生をめざすのが民主党に託された政治史的な使命のはずです。まずは格差是正や社会保障の充実。外交面では対米自立、東アジア諸国との協調。そういうはっきりとした旗印を掲げるべきだと思います。旗印がはっきりしていると「選ばれないリスク」を負うことになりますが、そのつどの世論や政局に振り回されて旗印を捨ててしまえば、民主党にもう未来はありません。

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2012年07月13日 16:04 に投稿されたエントリーのページです。

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