懐かしい未来

2009-11-20 vendredi

東京ツァー、無事終了。
学士会館泊。9時半に三省堂本店に集合。
足立さんたちとまずは三省堂にて『日本辺境論』にサインをする。
60冊サインして、書店員のみなさんに「よろしくね〜」とご挨拶してから、次は池袋ジュンク堂へ。
70冊のサイン本にネコマンガを描く。
一冊2秒(というのは嘘で、8秒くらいはかかる)。10分ほどで終わる。
ジュンク堂の「書店シリーズ」にそのうちご協力しますと「空手形」を発行して、次は八重洲ブックセンターへ。
ここでも数十冊にサイン。
サイン本と言っても別にサイン会をしているわけではなくて、「著者サイン本」という腰巻きをつけた本を店頭で販売するというだけのことである。
ただ、サインした本は返品が効かないので、書店としては売り切る必要があり、店内のホットスポットに本を置かねばならない。
そうである以上、出版社としてはできるだけ多くの本にサインをさせて、書店サイドをその気にさせたい。
両者とも私の本を「できるだけたくさん売りたい」という点では利害を一にしているわけであるから、著者としては、ひたすらねじりはちまきでネコマンガを描きまくる。
続いて丸の内の丸善へ。
これで午前中のお仕事はおしまい。

渋谷まで送っていただいて、足立さんにお昼をごちそうになって、次は NHK の501スタジオへ。
大貫妙子さんのラジオ番組「懐かしい未来」の収録。
初対面のご挨拶。
でも、初対面のような気がしない。
声を知ってるから。
大貫さんの声は初期のユーミンのバックコーラスから数えると35年聴いているし、90年代の芦屋山手町時代は主夫業の BGM として大貫さんの CD を選好していた。
いまでも晴れた午前中に洗濯なんかしていると、ふっとメロディが浮かんでくる。
オンエア用に大貫さんの好きな曲を訊かれていたので、『新しいシャツ』、『突然の贈り物』、『いつも通り』と、初期のヒットソングをリクエストする(チョイスされたのはどれでしょう)
その懐かしい大貫さんの声にゆっくりと浸かりながら1時間半にわたって対談。
大貫さんとは『考える人』で連載している「お隣さん」同士である。
二人をつなぐキーパーソンはもちろん大瀧詠一さん。
大貫さんの番組の先月のゲストは大瀧さんで、私は先週の水曜にラジオ収録で大瀧さんとお会いしているわけで、当然、ナイアガラの話になる。
いろいろ話しているうちに、大貫さんがため息まじりに「ほんとにナイアガラーなんだ・・・」とつぶやく。
ラジオ関東の Go! Go! Niagara をリアルタイムで聴いていて、ベスト盤が発売当日に買った Let’s ond again であるというようなリスナーは大貫さんのまわりにさえあまりいないようである。
ふたりの共通の友人がほかにもうひとり。
宮田茂樹さんである。
大学時代にイーストハードでドラムを叩いていた話をしたあと、ゲッツ・ジルベルトがかかっている間にマイクをオフにしておしゃべりしていたときに、ジョアン・ジルベルトのことから思い出して、そういえばバンドのときにベースを弾いていたのは日比谷高校の先輩で、駿台時代の麻雀仲間だった宮田さんなんですよと申し上げる。
大貫さんが「えええ」とのけぞる。
初期のアルバムは宮田さんがプロデュースしているのである。
おまけに先般のジョアン・ジルベルトの「幻のコンサート」(宮田さんがプロデュース)の「幻のパンフレット」には大貫さんも私も原稿を書いていたのである。
繋がる人とは、いろいろなところで繋がっているものなのね・・・と大貫さんが遠い眼をする。
たいへん愉しい時間を過ごして、「またどこかで会いましょうね」とご挨拶してから Bunkamura へ。
最後のお仕事は週刊ポストの取材で、『日本辺境論』の話。
だんだん慣れてきたので、いかにもの「執筆意図」を語る(あとぢえなんだけど)。
ビールやワインをごちそうになっているうちに、ぺらぺらと大風呂敷がますます拡がってゆく。
ぐったり疲れて神戸へ帰る。
明日は朝から会議だ。
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