文楽ってすごい

2009-11-15 dimanche

今週も土日はお仕事。
先週も、先々週も、その前もずっとお仕事・・・
週末らしい週末はカレンダーをめくると9月19日が最後である。
以後、土曜日は愛知で講演、バザー、AO 入試、入試問題点検、大学祭、浜松で講演、指定校推薦、公募推薦と続いたので、甲南合気会の諸君とはかれこれ2ヶ月ほどお会いしていない。
みんな元気でお稽古しているのだろうか。
来週は稽古に行けるけれど、次の11月28日は日本ユダヤ学会が京都であるので、またお休み。
もちろん助教の諸君が交替で道場の指導には当たってくれているのであるが(ありがとね)、私は3ヶ月に2回しか道場に行っていないことになる。
合気道関係のイベントも休み続けである。合宿も研修会も武道祭も総会も、どれも欠席した。
まことに心苦しい限りである。
大学の仕事で休むのは仕方がないが、講演で稽古を休むのはつらい。
でも、「土曜日は合気道の稽古がありますから、仕事はできません」という断りがなかなか通じないのである。
世間の人はそれを「土曜日はゴルフの練習がありますから、仕事はできません」というような感じに受け取るらしく、怪訝なリアクションをする。
そういうことが続いてひさしく稽古を休んでいる。
来年度も土曜日には入試業務がいろいろ入るが、講演とか取材とか対談とか、そういう学外の仕事はもう一切入れないことにした。
原則として土曜日は合気道の稽古、日曜もできるだけ稽古という心づもりである。
昨日は公募制推薦入試、編入試験などがあり、朝8時半から夕方6時まで大学の入試本部に詰めている。
志願者数は堅調に推移しており、入試責任者としては気分が楽である。
大きなトラブルもなく、無事に試験が終わる。
みなさん、お疲れさまでした。
家に帰ってから翌日の文楽取材の「予習」。

日曜は朝から日本橋の国立文楽劇場へ。
『考える人』のための桐竹勘十郎さんの取材。
『芦屋道満大内鑑』を幕見してから、インタビュー。終わってから、文楽の「見方」を教わったばかりなので、それを応用すべく第二部の『心中天網島』「北新地河庄之段」を幕見。
文楽劇場は明後日「あの方」がお見えになるということで、ものものしい警護である。
「あの方」って、オバマ大統領ですか?と訊いて笑われる。
「人形遣い」の三人遣いという技法について、詳細にわたって説明をうかがう。
勘十郎さんはとってもフレンドリーで、説明も実にわかりやすい。
話を聴いているうちに、「人形遣い」という仕事は「気の感応」の力がなければつとまらないということがだんだんわかってくる。
三人でまったくアイコンタクトも言葉による合図もなしに自由自在に人形を操るのである。
その日によって動きが変わる。
だが、厳密に言えば、主遣い(頭と右手を扱う)があとの二人(左遣いと足遣い)に指示を出してるというわけではない。
指示を出して、それに反応して動いていたのでは間に合わないからである。
人間の身体だって、頭が動いてから、手足が応じるわけではない。
同時に動くに決まっている。
つまり、三人が同時的・共同的に人形の操作に参加して、そこに三人の人形遣いの誰にも中枢的にはコントロールされていない、独立した「人形の身体」が生成するのである。
その「人形の身体」が「動きたい」と思った動線を三人が共同的に実現する。
こういう非中枢的な身体運用こそ「日本の身体」の構造的な特性なのだということが改めて実感されたのである。
日本の芸能はまことに奥が深い。
『心中天網島』の紙屋治兵衛はまことに「チャーミングなダメ男」である。その「バカだけとかわいい」キャラクターを勘十郎さんはみごとに人形において実現していた。
いや、ほんとうにかわいいのである。
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