ナイアガラー温度

2007-11-26 lundi

死のロード最終日。
朝一で白夜書房の取材。
『ラグビー魂』とか『野球小僧』というカラフルなタイトルの雑誌を出している出版社である。
平尾剛さんとの共著をお読みになって、スポーツの身体運用について意見を聞きたいということで質疑にお答えする。
コンタクト・プレーはある種のコミュニケーションではないか(ラグビーをしたことがないからタックルされる感じもする感じもわからないけれど)という話をする。
武道的な身体運用の最終目標は「敵を作らない」ということである。
ラグビーでもたぶんその基本の考えは変わらないはずである。
でも、ボールゲームのプレイヤーに「敵を作らない」ということの意味を理解してもらうことはたいへんに困難である。
これまで武道関係の学会や研究会で何度か持論を語ったことがあるけれど、「強弱勝敗を論じない」ということはあまり(というよりぜんぜん)ご理解頂けなかった。
まあ、そうですよね。
「天下無敵」という言葉の語義が「天下に敵がいない」ということであることは誰にでも理解してもらえる。
だが、では「敵がいない」状態というのがどういうものであるかを問うてみると、そのような想像に知的資源を投じる人はほとんどいない。
それを理解するためには「主体」という概念の解体を経由せねばならないのであるが、「主体性の呪縛」に取り憑かれた近代人にはそのハードルがたいへんに超えることの困難なものなのである。

取材が終わってから武蔵小山へ。
AGAINで大瀧詠一さんとのトークセッションの収録。
大瀧さんとは『文藝』のナイアガラ特集で山の上ホテルで対談して以来である。
電話では今年のはじめにおしゃべりしたけれど、新築なった45スタジオをお訪ねする約束を果たさぬままに、今年も暮れようとしている(大瀧さんすみません)。
今回はラジオ・デイズのコンテンツのためのセッションで、平川克美君と石川茂樹君と私の三人(「東京ファイティングキッズプラス1」というか「温泉麻雀メンバーマイナス1」というか)で大瀧さんをお迎えするというかたちである。
石川君はAGAINに大瀧さんが来られるというので、二週間くらい前から興奮してよく眠れなかったそうである。
ナイアガラーとしては当然のことである。
石川君によるとナイアガラーにはいくつか段階があって、81年の A Long Vacation から聴き出したのが「新参ナイアガラー」。Let's Ondo Again をリアルタイムで買ったのが「中期ナイアガラー」。ラジオ関東の Go! Go! Niagara を聴いていたのが「初期ナイアガラー」。はっぴいえんどをリアルタイムで聴いていた方々が「プロト・ナイアガラー」ということになる。
石川君も私もはっぴいえんど時代は名前しか知らず、大瀧さんがソロ活動を開始してからの熱狂的リスナーであるので、「初期ナイアガラー」に分類される。
私はあまりこういう「ナイアガラー温度差」ヒエラルヒーにこだわりはないのであるが、石川君は「新参」(といってももう四半世紀を超える大瀧ファンなのに)の方々に対しては「ヒットアルバムが出てから聴き始めた」という点を咎めて許さないのである。
なかなか排他的である。
しかし、私は石川君から20年以上にわたり大量の「ナイアガラお宝音源」のご提供を受けている関係もあって、それに異を唱えることのできる立場にない。
(と書いて日記をアップしたら、石川君からこの説明では誤解のおそれがあるのでは・・・というメールが届いたので、ひとこと補足しておきますね。
石川君は決してロンバケ以後にナイアガラーになった人たちを排斥しているのではありません。
そうではなくて、「ラジオ番組を聴けなかった世代」が「ナイアガラ道」にさらに精進するためにはこの時期の大瀧さんの音楽活動(ほとんどが現在では入手不能の音源です)にアクセスすることが不可欠であると考えている、ということです。
そのために石川君は日本中の若きナイアガラーたちにせっせと「Go! Go! Niagara」のテープをコピーして送っている「ナイアガラ道の伝道師」のつとめを果たされているのであります。
使徒マタイのようなものですね(大瀧さんも昨日そう言っておられました)。
ともあれ、そういうコアな初期ナイアガラー二人と60年代ポップスにはちょっとうるさい(けれどもノン・ナイアガラーの)平川君で大瀧さんから音楽の話と「大瀧詠一的生き方」について存分に伺おうというのである。
内容は・・・申し訳ないけれど、ここで書くわけにはゆかないのである。
なにしろラジオデイズの「売り物」コンテンツですから。
どんな話(なにしろ4時間しゃべったのである)か知りたい人は来月中旬くらいにはラジオデイズにアップロードされるはずなので、それをダウンロードしてお聴き下さい。
いや〜面白かったです。
でも、ぼくの出演はほとんど「笑い声」だけですけれど。
大瀧さんほんとうにありがとうございました。
まことに夢のような4時間余でありました。
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