ジニ係数って何?

2007-08-25 samedi

「所得格差が拡大」と朝刊の見出しにあった。
05年の所得再分配調査の結果が厚労省から発表された。
それによると、ジニ係数は前回調査(02年)より上昇し、過去最高となった。
ジニ係数というのは所得の均等度を示す数値で、どうやって算定するのか数式は知らないけれど、1が最高で0が最低。
1というのは1人の国民が国民所得をぜんぶ独占している状態を表し、0は全国民の所得がまったく同一の状態を表す。
それで日本の場合、世帯単位の当初所得のジニ係数は0.5263。再分配所得(税や社会保障であれこれ手当をしたあと)のジニ係数は0.3873。
これだけでは何のことかよくわからない。
日本の趨勢だけ見てみる。
1967年が当初所得が0.37,再分配が0.33,それから漸減(つまり均等化が進んで)。81 年が底で、0.35、0.31。それから上昇カーブになって、統計のいちばん新しい数値である99年で0.47,0.38。
8年前と比較すると、当初所得のジニ係数は0.05ポイント上がっている。
数値は所得の不平等(つまり富者と貧者の二極化)が進行しつつあることを示している。
その原因としては年金受給世帯の増加、単身者世帯の増加が上げられている。(公的年金は「所得」にカウントされないので、年金生活者は所得ゼロとみなされる。)社会保障制度の不備も指摘されている。
なるほど、そうですか。
アメリカのジニ係数はどうなっているのか調べてみたが、数値がいろいろあって、どれを見てよいのかわからない。いずれも0.5を越える数値ではない。0.5を越えているのはザンビアとかボツワナとかブラジルとかメキシコとか、アフリカ、中南米の国だけである。日本もそんな国と同じように貧富の差が激しいのだろうか・・・と思うと、そのデータ
http://devdata.worldbank.org/wdi2005/Section2.htm
では日本のジニ係数は0.249(1993年)と表示されている。
どうもよくわからない。
よくわからない数字に基づいて議論するのは危険だし、意味のないことなので、この話はこれで止めておく。
というか誰が教えてください。

(1)国際比較をすると、日本の所得格差は大きいのか小さいのかどちらなのか(ネットで検索していると、「日本でも格差がアメリカ並みに拡がっている」と書いている人と「日本は世界でも例外的に格差の少ない社会である」と書いている人と両方いる。どっちがほんと?)
(2)当初所得格差が拡大していることはわかったけれど、再分配によってその格差の補正はある効果的に程度なされているのか、なされていないのか(ネットで検索していると、「日本はちゃんとやっている方だ」という解釈と「ぜんぜんダメだ」という解釈と両方ある。どっちがほんと?)

ご教示をお待ちしております。
「どっちがほんと?」と訊いておきながら、その舌の根も乾かぬうちに失礼なことだが、私はじつはそれは「どっちもほんと」だと思っている。
本人が「ほんと」だと思っていることは、その人にとっては「ほんと」である。
私自身は「格差」というのは(ひろく「貧富」といってもいい)幻想的なものだと考えている。
かつて「一億総中流」という認識がひろく流布しているときには(実際には天地ほどの所得差があったが)日本人は一億総中流気分であった。
それと同じように「格差が広がっている」という認識がひろく受け容れられているときには、(実際に所得差がそれほどなくても)格差「感」は強く意識される。
所得200万円の人から見ると、所得が1億円の人も所得が10億円の人も「(雲の上の)同じ世界の人」である。
だが、同じその人は所得500万円の人を自分とは「(同じ地上の)別世界の人」だと思っている。
一方では9億円の所得差が「ゼロ」査定され、一方では「300万円」の所得差が「越えがたい階層差」として意識される。
格差というのは数値的なものではなく、幻想的なものであるというのはそのことである。
人は自分の等身大を原器としてしか、所得差の意味を測ることができないのだが、人が「自分の等身大」と思っているものは、ほとんどの場合、イデオロギー的構築物なのである。
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