また風邪をひいた

2007-05-23 mercredi

風邪をひいた。
夜中に目が醒めたら喉が痛い。
げ。
起き出して「ルル顆粒」を飲む。
朝起きても、痛みが引かない。
困った。
このあと6月3日まで一日も休日のない「レストレス」な日々が続く。
こんなところで風邪をひいたのでは世間さまに顔向けができない。
神様、風邪治して、と念じつつ二度寝。
10 時に三菱銀行の方々がお見えになる。
資産運用(私もついに「運用すべき資産」というものを蔵する身となったらしい)についていろいろと御指南を受ける。
私は「自分のよく知らないことについては、専門家に丸投げ」することにしている。
IT環境整備はIT秘書室に丸投げ、税金はマイ税理士に丸投げ、当然資産運用は三菱東京UFJ銀行芦屋北支店に丸投げである。
あなたはつい昨日「シロートの前に『私は専門家です』といって登場する人間は10中8,9詐欺師である」と書いていたではないか、前後矛盾しないのかというお怒りはあるだろう。
よく見て欲しい。
私は「10中8,9」と書いたのである。
「10中1,2」は「ほんもの」なのである。
そして、私は「自分に利益をもたらす人間」とそうでない人間を識別するときに限って、超人的な判断力を発揮する人間なのである。

喉の痛みをこらえつつ大学へ。
午後2時から『プレイボーイ』のインタビュー。
「プレイボーイ・インタビュー」というのは、この雑誌の二つの名物のうちの一つ(もう一つはプレイメイトのヌードグラビア)である。
プロのインタビュアーが徹底的な事前調査をした上で、「これまでどんなインタビューでも訊かれたことのない質問」を絨毯爆撃的にしかけてくるという結構のものである。
インタビュアーはノンフィクション・ライターの足立倫行さん。
私よりはるかにキャリアの長い炯眼の物書きに「ぐいぐい」と質問されるのである。
「え〜、そんなことまで訊くんですか」というような質問をばんばん浴びせられる。
面白かったのは、私の書き物の中に「性愛」についての一般論はあるが、個別的な事例についてはほとんど言及されていないのはどういう訳であるかというご質問。
これは前も書いたとおり、エロス的関係というのは「相手のある話」であって、私の専管事項ではないからである。
私のプライバシーなんか二束三文で公開してもよいが、他人のプライバシーは公開できない。
だいたい、私のこのブログ日記にしても、私の書き物にしても、私のかつてのガールフレンドたちはみなさんきっちりチェックされているのである。
今ではそれぞれにご夫君なりお子様なり堂々たる社会的お立場なりというものがある。
うかつなことを書いて、その平穏な生活に波風が立っては申し訳が立たない。
たまに電話とかメールとか来て、「ウチダくん、読んでるわよ。ご活躍みたいね」というようなことを言われると、「はい、すみません(なんでまず謝るんだろう)。非力ながらがんばっております」と電話口で直立不動になってお答えするのである。

2時間にわたる濃いインタビューでへろへろになって、「音楽との対話」三回目の授業。
斉藤言子先生の『天守物語』と『ノルマ』のビデオを拝見してから、オペラと国語の関係についての話から始まる。
オペラの歌唱法に日本語を載せるのはむずかしい。
でも、藤原義江や榎本健一や川田義雄はオペラに日本語をそれなりに苦心して載せていた。
近年でも、山下達郎くんの歌唱法にはベルカントの部分ある。
大瀧師匠のご指摘によれば、桑田佳祐の歌唱法にいちばん影響を与えたのは(エリック・クラプトンではなく)カテリーナ・バレンテだそうであるし。
藤原義江といっても学生は誰も知らないので(川田義雄とあきれたぼういずはもっと知らぬであろう)、この話は早々に切り上げる。
本日のメインネタは「倍音」である。
まずホーミーのCDをお聴きいただき、次に声明のCDを聴く。
CDなので、高次倍音はカットされているが、実際にライブで聴いた場合には、無数の「音の虹」(@石黒晶)が耳に届くはずである。
倍音とはどういうものかを経験していただくために、150 人ほどの学生さんに最後に「倍音声明」をしてもらう。
音楽学部の声楽の学生さんたちも含まれていたので、最初にしてはたいへん多彩な倍音が出る。
15分ほどであったが、学生たちはけっこう汗をかいているものが多かった。
身体が震動すると体温が上がるのである。
帰り道にまだ「う〜お〜」とうなっている学生がいた。
学生たちに「未知のもの」を経験させることが教師の仕事である。
その意味では、まことに達成感のある授業であった。
斉藤先生、石黒先生、どうもありがとうございました。
またこのメンバーでDJをやりましょうね。
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