甲南麻雀連盟の「打ち納め」。
思えば2005年10月1日に発足した当会も、はやくも14ヶ月の風雪を閲したのである。
甲南麻雀連盟は、佐藤 “ドクター” 友亮、谷口 “ゑびす屋” 武史(旧姓 “越後屋”)、釈 “老師” 徹宗、江 “だんじりエディター” 弘毅、それと私の五名によって発足した。その経緯については去年のブログ日記に詳しい。
フッサールは「物自体に還れ」と言い、アルチュセールは「マルクスに還れ」と言い、ラカンは「フロイトに還れ」と言った。
それらの先賢の驥尾に附して、私たちは21世紀の日本社会に向けて「麻雀に還れ」という断固たる思想史的宣言をなしたのである。
「麻雀に還れ」
なぜなら、私たちは人生についての(ほとんど)すべてを麻雀から学んだからである。
そして麻雀のうちには私たちがいまだ知ることのない無限の叡智が宿っている。
それゆえ老師は「人生は麻雀の縮図である」と道破されたのである。
麻雀において、すべては宿命であり、同時にすべては自由である。
なぜなら、私たちは「自摸牌」という宿命に100%支配されつつ、同時に「打牌」において100%の自由を享受しているからである。
卓をよぎる一瞬の手さばきのうちに宿命と自由が交錯する。
昨日の打ち納めはまさにその「宿命と自由」の火花を散らすきびしい闘牌が演じられたのである。
打ち納め開始時点における年間総合成績は
勝率 勝数 半荘平均 合計点数 半荘数
1 ザ・ラガーマン 0.357 15 8.83 371 42
2 会長 0.329 23 7.94 556 70
3 画伯 0.318 14 2.61 115 44
4 ドクター 0.311 14 4.11 185 45
5 歌う牧師 0.269 7 -1.00 -26 26
6 ゑびす屋 0.241 7 -0.76 -22 29
7 だんじりエディター 0.224 11 2.76 135 49
8 泳ぐ英文学者 0.222 6 -5.22 -141 27
9 かんきちくん 0.182 6 -0.30 -10 33
10乱れ髪アオヤマ 0.147 5 -12.85 -437 34
11弱雀小僧 0.094 3 -7.38 -236 32
12芦屋麻雀ガール 0.040 1 -17.16 -429 25
規定打数に達していない参考記録としては
ホリノ社長 0.333 6 3.78 68 18
シャドー影浦 0.313 5 5.63 90 16
老師 0.227 5 -2.64 -58 22
勝ち点、勝ち数において会長の優位はゆるがぬものの、打ち手にとっての真の名誉は「勝率」である。
この時点で二位の会長と一位のザ・ラガーマンの勝率差は2分8厘。
逆転は困難かと思われた。
第一局ドクターがトップ。
これでドクターが勝率0.326に上げ、負けた私は勝率を0.324に下げて、二三位が逆転。
一位二位三位が参戦した天王山の第二局では私が大勝。
勝率0.333(72戦24勝)。ドクターは0.319(47戦15勝)で再び二三位逆転。
ザ・ラガーマンは0.349(43戦15勝)で首位をキープ。
第三局は牧師が勝利して、ザ・ラガーマンは本日二敗目を喫する。
第四局ではドクターがトップ、ザ・ラガーマンは三戦して勝利なきまま二人が抜ける。
そして、この時点で驚くべき事態となった。
ザ・ラガーマンが45戦15勝の0.333。
ドクターが48戦16勝の0.333
そして、会長が72戦24勝の0.333。
なんと勝率一位に三人が並んでしまったのである。
すべては最後の半荘にかかった。
一人三半荘ルールで行ったので、最後の半荘に参加するのは私一人。
ここで私がトップを取れば私が単独一位。
私が二位以下であれば、ドクターとザ・ラガーマンが2006年度の年間王者の座を分かち合うことになる。
相手はだんじりエディター、みだれ髪アオヤマ、そして前期勝率一位を私と競った歌う牧師。
打牌に力がこもる。
東一局いきなり江さんに満貫を振り込む暗雲のスタート。
東場終了段階でマイナス15。
ドクターとラガーマンはすでに祝杯のワインを飲み始めている。
南二局の親で立直平和自摸一並刻ドラ1の親満を自摸り上がって挽回。
オーラス時点で私がプラ4、二位のアオヤマさんがプラ3。百点棒差。
親の江さんが後半に立直、アオヤマさんが満を持して追っかけ立直。
どちらかに振り込めば私のトップはなくなる。
降りても、アオヤマさんが上がればトップはなくなる。
年間勝率一位をかけた最後の一局となった。
江さんが「あ!」と小さな声をあげて自摸った三索を卓に置く。
「ロン!」と北荘のアオヤマさんが声を上げる。
アオヤマさんの後ろで手を見つめていたドクターとラガーマンが歓声を上げる。
「ロン!」と南荘の私が声をかぶせる。
アオヤマさんが信じられないという顔をして中空に目を浮かせる。
アオヤマさんの手は「立直、混一色、対対和、三暗刻、中」の倍満(もちろん自摸れば四暗刻)。三索六索のシャボ待ち。
私は三索、四索、六索の変則三面待ちのタンピン2000点。
オーラスのアタマハネで私は73戦25勝0.342で勝率単独一位、最多勝利、最多得点、最高勝率の年間三冠王となって会長の面目を施したのである。
あの三索をアオヤマさんが自摸っていればアオヤマさんの役満で祝祭的な「打ち納め」となったはずである。
わずか一牌のずれで人生の明暗が分かれたのである。
「ノーサイド」のホイッスルが高らかに鳴り渡り、甲南麻雀連盟2006年シーズンはこれをもって終了した。
冷たいビールとシーバスの水割りで互いの健闘をたたえ合い、来春からの2007年シーズンへ向けて心機一転を誓う会員一同の唱和する「甲南麻雀連盟会歌」の歌声が高らかに深夜の芦屋の街に響くのであった。
「ポンといったら手を出すな/早い立直は一四索/出るかヒロキの字一色/嗚呼、ドラ槓に上がりなし」(二番以降歌詞省略)
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(2006-12-30 12:05)