今年一番忙しい一週間の三日目。
昼にH水社のファンキーS山君が来る。
S山君は「七色の髪」をしているとるんちゃんから事前の連絡があったが、ほんとうに七色だったのでびっくり。
関学に営業にきたついでに私のところに遊びに来たのである。
1時間ほど日本におけるフランス語需要の衰退とH水社の今後の出版戦略について意見交換。
出版企画もそれとなく持ち込まれるが、聞こえないふりをしてスルー。
午後1時から5時まで4時間ぶっ続けでゼミ面接26名。
さすがに気息奄々となる。
居眠りこきながら千里中央へ。
阪急ホテルで養老孟司先生との対談。
『考える人』という新潮社の雑誌のための対談である。
私の『私家版・ユダヤ文化論』を養老先生がおもしろいと評されたのをA立さんが聞きとがめて、「では、ふたりにユダヤ論を語ってもらおう」という、「文春の褌で新潮が相撲を取る」という展開になったのである。
A立さんは養老先生の担当であり、私と名越先生の対談本の担当であり、さらに甲野先生の担当でもあるという、天性のコーディネイターである。
司会は『考える人』の編集長のM家さん。
養老先生が少し遅れて見えるまでにビールを二杯、ワイン二杯を飲んでしまったので、対談が始まったときにはすでに「微醺を帯びる」というエリアから「酩酊する」エリアに以降しつつあり、しらふであれば養老先生の片言隻句に「は」と姿勢を正してお答えするであろう私も「んですよねー、センセー、へへへ」というような距離感に欠けた対応に終始することになった。
養老先生は世人の心胆を寒からしめる非人情なる毒舌の大家である。
英知においては千里の径庭があるが、こと非人情と毒舌においてはウチダもまた先生と風儀をともにするものであるので、先生の舌鋒が非人間的に先鋭化するほどに「熱い風呂」に浸かる江戸っ子のように快感肌に粟を生じるのである。
中華料理で始まった対談はその後ラウンジに移り、話題はユダヤから日本人論、死体と文脈、ヤクザの対人戦略、『総長賭博』と忠臣蔵、中国語における冠詞と助詞の不在の文明的影響、親孝行によるトラウマ退治、『足長おじさん』の威嚇行動・・・と転々として奇を究め、禿筆をもって尽し難いのである。
あっというまに時間が経ち、終電ぎりぎりのJRに飛び乗るために千里中央を後にする。
またこの続きをやりましょう、ということで次回は箱根と話が決まる。
箱根には洛陽の紙価を高らしめたかの『バカの壁』の収益で新潮社が建てた山荘(別名「バカハウス」)があり、これはことの理路からして養老先生からの贈り物のようなものである。ぜひ拝見したいものである。
と書いたあとに、新潮社のA立さんから訂正のメールがあったので、謹んで訂正させていただくのである。
「さて、ひとつ日記で訂正が・・・
『バカハウス』~マルシー茂木健一郎さん~は、 南伸坊さんの描いた馬と鹿の壁があるために 『バカの壁』で建てられたと言われておりますが、 新潮社の建てたものではありません。
ただし新潮社では『バカの家』と呼んでおるのですが・・・、
住人の知能を疑うネーミングともなりますので呼称をあらためる予定です。」
「バカハウス」の命名者は茂木さんだったようである。
しかし、南伸坊画伯の揮毫されたという「馬」と「鹿」の壁画はぜひ拝見したいものである。
投稿者 uchida : 2005年12月01日 13:04
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» 「考える人」は何を考えていたのか from Over 40
クスっとひとりごちる。 『考える人』という新潮社の雑誌のための対談である。 ――中略―― 養老先生は世人の心胆を寒からしめる非人情なる毒舌の大家である... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年12月01日 14:25
» 毒舌はハリネズミの撫で方 from 考えるのが好きだった
内田先生のブログを読んだ。養老先生と対談をしたらしい。嬉しいな。早く読みたい。「考える人」早く出ろ〜。
養老先生は毒舌の大家らしい。まあ、私が読んでも根性... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年12月02日 22:59
内田先生、はじめまして。十数年日本を空けていました。今回少し日本に帰ったら、弘毅君がレビナスのことを教えてくれて、ブログのサイトまでくれました。ドイツに帰って、ずっと時間と点在する人々について考えていたところ、そうか彼らはそう考えていたのか、と考える視点、支点を与えられました。先生のブログに感謝します。中国文学でも、人間は二人以上から、しかも名をもったときから存在が始まります。レビナスは、強制労働所の人々の目から発する声が、なぜドイツ人看守には、届かないのだろうか、と他者について考えたでしょうか。システムを重んじる国民であるとき、声は遮断されます。日本もシステム化されつつありますか。
来年は、レビナスが100歳になります。H水社は、だからがんばってください。私はレビナスとお誕生日が同じ日なのです。
レビナスは美しい顔をしています。先生たちがマージャンをしている写真は、ミーフィがいるのでいいですね。ミーフィは他者ではないのです。絶対者なのです。ミカエル レビナスの特集なんかも、どうですか。おげんきで。
ミカエル レヴィナスは息子のことです。彼は音楽家です。追伸まで。
内田先生
>1時間ほど日本におけるフランス語需要の衰退とH水社の今
>後の出版戦略について意見交換。
僕はパリ国立高等音楽院を出ています、一応メシアン門下です、今リヨン国立音楽院で客員教授をしております、でフランス語はめんどくさくてイラネーと石原都知事が申しておりました、又19世紀末や'70年代と今は違い、強盗、移民が跋扈して浪漫もへったくれもありません、だから憧れの巴里は吹っ飛び益々の衰退を招くと思ってます。
パリとリヨンの音楽学校留学生は日本人も含め女性が多いです、従って彼女達が母国に帰ってフランス語を生かす職業は限られてますし、音楽の仕事でもフランス語は必要とされないのでこれ又衰退します、そして伴侶を外国の方を選ぶと益々日本にはフランス語は根を張りません、あの美しい韻を踏んだ詩なんて、大学で始めて聞くようではだめですね。
台湾や支那からの留学生は発音が綺麗ですね・・・。
仙堂
投稿者 \Shin^o^chanDazo/
: 2005年12月03日 10:30
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