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2004年12月24日

悪い兄たちが帰ってきた

『聖風化祭』という同人誌をつくっていた大学生のころ、平川くんはそこに詩と詩論を、私は身体論や表現論を書いていた。
私は「物語」と「身体」のかかわりについて考えていて、平川くんは「ことば」のもつ現実変成の力について考えていた。
そう書くと、30年経っても、あまりかわりばえのしないことがわかってしまう二人なのであるが、そのときに平川くんが寄せた詩の一編のタイトルが「悪い兄たちが帰ってきた」というものであった。

私はこの短いことばのうちにこんな風景を一瞬見た。

古代の中東の荒野のようなところに細々と立つ幕舎がばたばたと風にあおられている。
そこから顔を出した少年が、ふとまぶしい目をして地平線を見ると、はるかな蜃気楼の中を「悪い兄たち」が荒馬を疾駆させてこちらへむかってくる姿がゆらゆらと見える。
「いよいよ『父』との命がけの戦いが始まる」
そう想像すると、少年は急に動悸が激しくなってくる・・・

まるでダーウィン=フロイトの「原父殺し」の情景のようだけれど、たぶんこの「悪い兄たちが帰ってくる」という図像は、私たちのDNAの中に残っている、遠い遠い人類が始まったころの記憶に遡る「元型的なイメージ」の一つのような気が私にはする。

そういう「つよいことば」を探り当てることができるかどうか、詩人の資質はそこにかかっている。

「つよいことば」というのは、集合的、無意識的な準位で読む人にふれることばである。
それはただ一行の、場合によってはただ数語であることもある。
けれども、長い歳月をかけて、読み手の身体の骨や肉のうちに食い込んでしまう。

このフレーズを書き付けたとき、平川くんはまさかそれから30年後に、私たちが共著で本を出し、その続編を「わかいやつらにばあんと説教してやってください」という江編集長の懇望によって、『ミーツ』に連載することになるなんて、想像していなかった。

けれども、私たちはまるで魅入られたように、カッサンドラの予言を成就するかのように、「悪い兄たちが帰ってきた」という詩句にふさわしい政治的状況に投じられたのである。

おそらく、「つよいことば」には遂行的な力がある。

装飾的なことばや、比率が美しいことばや、みごとな階調を保つことばがある。
それらをもし「空間的なうつくしさ」というならば、その一方に、装飾的でも、均衡的でもないけれど、何かを創りだしてしまうことばがある。

それが「つよいことば」だ。

レヴィナスは、時間の中でしか、その意味が検証できないことばのことを「預言」と呼んだ。

30年前に平川くんはそのような意味で「預言的」な一行を書いた。

そして、「ことば」には現実変成の力があるかという自らに向けた問いに、自分自身を「賭け金」において回答してみせたのである(おお、なんて詩的な人生なんだ)。

というわけで、『悪い兄たちが帰ってきた 東京ファイティングキッズ・リターン』は、本日より当HPならびに平川ブログで同時連載開始(だよね?)

まだTFK2用の部屋を長屋に新築していないので、とりあえず二三日は「旧・東京ファイティングキッズ部屋」に間借りしてます。
そちらをご覧ください。

投稿者 uchida : 2004年12月24日 10:19

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トラックバック時刻: 2004年12月24日 13:02

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トラックバック時刻: 2004年12月25日 21:34

コメント

ごぶさたのチョンマゲです。
TFK、続きが始まっちゃいましたね。
ここを訪れるのは日課のひとつですが、
初回からこのドライヴ感ですもんねえ…拘束時間がさらに長くなりそうッス。

投稿者 こーちゃん [TypeKey Profile Page] : 2004年12月24日 17:24

1ヶ月ほど前にTFKを読み終えたばかりなので、リターンズをこんなに早く読めるとは、感激です!

『預言』、というほどたいそうなものではありませんが、その感覚わかります。
「あの時なんとなく発した言葉が、今ここに具現化してるなんて」ってな場面に、自分のような凡人でも出会うこと、ありますもん。

今『死と身体』を読んでおります。
「体で理解する・わかる」という表現、自分のよく使うフレーズのベスト5には入っているので、何だか自分の考えを後押しして下さっているようで、気分がイイんです。(後押しって、私が勝手にそう思ってるだけなんですが)

お二人の本、本当に腑におちまくり。

私はビジネスの現場の末端で、若い世代にお二人の珠玉の名言を咀嚼(だって、理解できない若者達が多いですからね~)し、トランスレートし、伝えて行こうと思ってます!

投稿者 ヤマナカ [TypeKey Profile Page] : 2004年12月25日 02:17

『悪い兄たちが帰ってきた 東京ファイティングキッズ・リターン』
は12/24封切り、以下アドレスで上映中です。
http://www.tatsuru.com/tokyo/

投稿者 イワモト [TypeKey Profile Page] : 2004年12月25日 10:35

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