2007年の十大ニュース

2007-12-31 lundi

年末恒例の「今年の十大ニュース」を考える。

1・『私家版・ユダヤ文化論』で第六回小林秀雄賞を受賞する。
この本では特に学術情報として新しいことを述べたわけではない。
ほかの私の書き物同様、「すでに公開されていて、広く知られている」情報の「ふつうはしない」組み合わせによって、世の中のできごとを構造化している「下絵」を浮かび上がらせる・・・というやり方にこだわった。
この本のアイディアでいちばん好きなのは、「ユダヤ人が例外的に知性的なのではなく、ユダヤ人に固有の思考パターンを私たちは『知性的』と呼んでいる」という「ちゃぶ台ひっくり返し法」である。
私はこの「ひっくり返し」技法をユダヤ人哲学者カール・マルクスから学んだ。
うれしかったのは養老孟司、橋本治、加藤典洋、関川夏央という私の敬愛してやまない諸先輩たちに仕事が評価されたことである。

2・また引越しをする。
引越しは私の宿痾である。
19歳で大学入学後からの引越歴は

相模原-駒場寮-野沢-お茶の水-平間-自由が丘-九品仏-自由が丘-尾山台-上野毛-芦屋(山手町)-武庫之荘-芦屋(山手町)-神戸(東灘区土山町)-芦屋(業平町)-芦屋(大原町)-神戸(御影町)

このリストを見て気づくのは、私が10代からあと人生のほとんどを「他人と暮らして」きたことである。
たぶん他人と暮らすのがたいへん好きなのである。
自分の好きな時間に寝て起きて、好きなものを好きな時間に食べて、好きなところに行って、好きなものを買って・・・ということに私はあまり(ぜんぜん)興味がない。
だから、私は一人旅というものをかつてしたことがない(一度だけ一人で野沢温泉にスキーに行ったことがあるが、退屈のあまりほんとうに死にそうになった)。
自分がしたいことを誰にも邪魔されずにひとりでやっていて何が面白いのであろう。
人生は邪魔が入るから楽しいのである。

3・たくさん本を出す(ということ自体にはもうあまりニュース性がないけれど)。
単著は『下流志向』(講談社)、『狼少年のパラドクス』(朝日新聞社)、『街場の中国論』(ミシマ社)、『村上春樹にご用心』(アルテス・パブリッシング)。
共著は『逆立ち日本論』(養老孟司先生との対談本、新潮社)、『合気道とラグビーを貫くもの』(平尾剛さんとの対談本、朝日新聞社)。
文庫化されたものが『私の身体は頭がいい』(文春文庫)、『大人は愉しい』(鈴木晶先生との共著、ちくま文庫)、『東京ファイティングキッズ』(平川克美くんとの共著、朝日文庫)。
アンソロジーへの寄稿が『身体の知恵』(齋藤孝さんとの対談を収録、大和書房)、『韓氏意拳』(守伸二郎さんとの対談を収録、スキージャーナル社)、『女性を幸福にする大学』(プレジデント社)、『自己を語る身体表現』(冬弓舎)。
『下流志向』は私の本ではじめて10万部売れた(これは講談社の営業力のたまものであるが)。
献本をしている友人たちから「本、出し過ぎ」と叱られた。
来年は控えます。

4・本が翻訳された
『下流志向』の韓国語訳が出た。『村上春樹にご用心』が中国から、『十四歳の子を持つ親のために』が台湾から翻訳のオッファーが来た。
どういうことなのか、よく意味がわからない。

5・歌手デビューを果たす。
石黒晶先生の作品で西宮芸術文化センターにて「倍音歌手」デビューを飾る。
デビューのステージがそのまま「さよなら公演」のステージである。
でもちゃんとしたクラシック音楽のリハーサルに参加できたのは、とっても楽しかった。
石黒先生、斉藤先生、ありがとうございました。

6・甲野善紀先生、島﨑徹先生との学術ユニットを結成。
今年から本学の客員教授になっていただいた甲野先生と舞踊専攻を率いる島﨑先生との「シンポジウム専用ユニット」を結成。7月27日にオープンキャンパスでデビュー。11月17日に武者小路千家の千宗屋さんをお迎えして、二回目のセッション。
第三回は来年6月7日に三軸修正法の池上六朗先生を、第四回は8月2日に養老孟司先生をお迎えする予定。

7・ラジオ放送でいろいろな人と対談
平川くんのところのラジオデイズのコンテンツのために、私と平川くんがホストになってゲストとおしゃべりをする。
第一回ゲストは高橋源一郎さん、第二回は養老孟司先生、第三回は大瀧詠一師匠。
高橋さんとは文学の話、養老先生とは虫の話、大瀧さんとは・・・・何の話をしたんだろう?
大瀧さんにこのとき「おみやげ」で成瀬巳喜男のDVDを2枚頂く。
そのあと大瀧さんのその映画の映像分析を読んで驚嘆。
映画について語るのに「こういう」やり方があったとは・・・
師匠はまことに畏るべきお方である。

8・朗報相次ぐ
増田聡、明日香さんご夫妻に男児誕生(哲大くん)。浜松のえびちゃんのところもお子様誕生。甲南合気会でもご懐妊、ご成婚など、朗報相次ぐ。

9・棚からぼた餅が落下してくる。
これについては詳述することがかなわぬのであるが、かなり重量のあるぼた餅であり、思わず腰を抜かしてしまったので、十大ニュースはここで打ち止め。

ではみなさんよいお年をお迎えください。
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