そろそろ師走です

2007-11-27 mardi

大瀧さんと会った「後遺症」がまだしばらく残っていて、ぼおっとしている。
とりあえず大瀧さんにいただいた成瀬巳喜男の『秋立ちぬ』(1960)を見る。
主人公のヒデオくんは6年生、12歳である。つまり大瀧さんと同年ということである。
小学校六年生の眼から見えたオリンピック前の東京の風景。
大瀧さん、これって「あれ」じゃないですか。
『三丁目の夕日』の原作者の西岸良平さんは大瀧さんより1コ上の細野晴臣さんと港区立白金小学校の同級生だそうである。
「風を集めて」が「東京の原風景」のBGMに好んで選択されるというのは、細野さんの「街のはずれの背のびした路地を散歩してたら・・・」という歌詞と西岸マンガのあいだにひそやかな共通点があることを人々がどこかで感知していたからだろう。
いただいたDVDのもう一つは同じ成瀬巳喜男『銀座化粧』。
この二作品には一体大瀧さんはどのような隠されたメッセージを託されたのであろうか。
大瀧さんの場合は、ほとんどすべてのメッセージがダブル・ミーニングになっている。
その表層のメッセージだけ読むか、もう一つ深層のメタメッセージまで読むかで「ナイアガラ・リテラシー」のが生じる(昨日石川君がいっていたのは、この「ダブル・ミーニング読み」の技術習得の必要性のことであろう)。
大瀧さんに「ナイアガラー」として認知されるのはたいへん難度の高い事業であり、私の場合は『文藝』の対談の中で大瀧さんが「山本富士子」の物まねをしたときに、それが「桜井長一郎による山本富士子の物まね」であることに気づいた時点で「ナイアガラー」認定を受けたのである。
けっこうたいへんなのである。わかるでしょ。
ともあれ、『秋立ちぬ』と『銀座化粧』を二つ続けて見ると、大瀧さんから私あての「隠されたメッセージ」が何かが判読できるはずである。
それは何であろうか。
わかったらご報告するので、お楽しみに。

いろいろなところから仕事の依頼が来る。
どんどんお断りする。
ある新聞から「人生相談」の回答者になってほしいという依頼を受ける。
500字で回答してほしいというので、断る。
人生相談に「字数制限」があるというのはなんとなく納得がゆかない。
一行で終わる場合もあるし、5000字書いても足りないこともある。
あるラジオ局から年末特番で1時間しゃべって欲しいという依頼がくる。
年末は煤払いと年賀状書きで忙しいので、東京に収録に行っている暇はないので、これも断る。
あるテレビ局から『先生はえらい』のドラマ化の話(そんなのがありましたね)について続報が届く。
「先生はえらい」というのはただの日本語のフレーズであって、私がコピーライトを持っているわけじゃないので、好きに作られたらよろしいのではないかとお答えする。原作料なんか取りようがないし。
韓国のラジオ局から、『下流志向』の翻訳が出て、けっこう評判になっているそうなので、それについて電話インタビューがある。
翻訳が出るとは聞いていたけれど、もう出たとは知らなかった。
仕事が早いなあ。
韓国でも「学びからの逃走・労働からの逃走」の徴候がすでに感知されているそうである。
子どもたちが「消費者マインド」で教育や労働の現場に登場すれば、そういうことになるのは原理的に不可避である。
別に日本だけの現象ではないはずであると思っていたが、やはりね。
中国語版もはやく出て欲しい(たしか台湾で準備中のはず)。
アジアのみなさんの読後感を聞いてみたいものである。
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