極楽スキーからの帰還

2007-03-11 dimanche

極楽スキーより生還。
1991年の3月に始まった大学の同僚とのスキー旅行も指折り数えて15回目(2002年、3年は膝痛のためお休み)。
膝が痛くて歩くのにも難渋していたときにはまさかふたたびスキーができる身体になるとは思っていなかったので、今こうして雪の上を滑走できる幸運を神と池上先生と三宅先生に感謝せねばならない。
3月6日の一日7会議(午前9時スタート、午後5時半終了)を終えて、ばたばたと荷造りをして、7日の朝大阪駅にてワルモノ先生、M杉先生、I田先生と合流。京都からU野先生が乗り込んでくる。
午前10時を過ぎたところで、ワルモノ先生がバッグからミネラルウォーターのボトルを取りだし、中身をアルミカップに注ぎ、それにミネラルウォーターを加えて飲んでいる。
「ミネラルウォーターのミネラルウォーター割り」とは奇怪な飲料である。
じっとみつめていると、ほんのり頬が上気して、微醺が風にのって漂ってくる。
さすが極楽スキー幹事である。
午前10時から身を挺して極楽化行動に突入である。
福井に入った頃から雪が降り始める。
まったく雪のない暖冬で、スキー場は雪不足に泣いていたのであるが、私たちがスキーに出立すると同時に雪が降り出したのである。
正午に金沢に着き、1時間15分ほどの乗り換え時間を利用して、近江町市場の「市場寿司」で「しろえび」「なまだこ」などを飽食する予定であったが、大雪のために列車が20分ほど遅れ、市場までの往復時間を考えると、昼食時間は20分。
「どうします、やはり行きますか?」
という私の問いかけに、すでに微醺を通り越して、酩酊に近づきつつある幹事は「行きましょう」と逡巡なく断言。
今年最初の大雪の中をタクシーを飛ばして市場寿司へ。
坐るや否や「いか」「なまだこ」「中トロ」「わたしも」「お酒熱燗で四本」「赤貝」「しらえび」「おれも」「いわし」「あたしも」「バイ貝」「蟹汁」「おれも」「えんがわとホタテ」「あたしも」と壮絶な勢いで寿司が五人の口中に投じられ、実働時間20分で51皿、お値段19800円。一人一分200円。
全員深い満足感と睡魔とともに再び車中の人となり、気づけば野沢温泉。
とりあえず温泉に浸かり、ただちに山海の珍味宴会に突入。
生ビール、熱燗、ワイン、焼酎などあたるを幸いのみ倒す。
明けて3月8日、9日は一日遅れのM浦先生とともに、快晴のゲレンデで上質のパウダースノーの中を遊び狂う。
例年のごとく正午にどんぶりハウスにて「カツカレー」。三時のおやつは Pasta di Pasta。
あとはただひたすら無邪気な赤子のように滑り続ける。
板のベントがどうであるとか、エッジの食い込みがどうであるとか、重心の移動がどうであるとかそのような俗世のことは誰も口にしない。
「ううう気持ちがいいよお」
「あああああ、きれいですね」
「ほんとにほんとにたのしいですね」
という幼稚園児的な会話が繰り返される。
飯、スキー、飯、スキー、おやつ、スキー、風呂、ビール、宴会、寝る、風呂、飯、スキー、飯、スキー、おやつ、スキー、風呂、ビール、宴会、寝る・・・という極楽ルーティンが三日目を迎えた後、私たちは昼飯のために入ったソバ屋で、まるで宿世の因縁で定まったかのように生ビールと枡酒をくいくいと呷り、生酔いのまま暖かい春の日差しの下をよろめき歩き、「ははははは」「わはははは、ははは」「おほ、おほほほほ」と笑い続けていたのである。
若き労働者諸君はこのようなブルジョワ的享楽に耽る大学教師たちに猜疑心と階級的怒りのマナザシをあるいは向けるやもしれぬ。
だが、私たちはこの1年ほんとうにコマネズミのようにくるくるとよく働いたのである。
ワルモノ先生なんか乳飲み子を抱えて不眠症に苦しみながら1年間に講演を100回もやったのである。
私だって寿命が3年分くらい縮むほどには働いた。
私どもが三日くらい極楽気分を満喫したからといってバチを当てるような神仏はどこにもおらないであろう。
今回は常連のY本先生、ドクター佐藤が涙の不参加であり、T橋先生はご家庭の事情でドタキャンとなった。
みなさんも来年はぜひ復活していただきたいものである。
野沢に持って行ったPCのPHSがいきなり接続不能になったので、メールができなくなってしまった。
「まあ、どうせ仕事の話ばかりなんだから、断る手間が省けてよいわ」と思っていたら、7日の夜遅くに携帯にゑびす屋さんから「掲載日が9日なんですけど、まだ原稿が・・・」というメールが入る。
え・・・? 原稿。
しまった『エピス』の締め切りを忘れていた。
しかし、メールで原稿は送れない。困ったことになった。とりあえず「明日中に送ります」と言い逃れを述べて眠る。
朝早起きして原稿を書いて、ファックスかなんかで送ろうかと思ったが、ぐっすり眠ってしまい、あっというまにゲレンデにでかける時間となる。
しかたがないので、歩きながら携帯メールで原稿を送ることにする。
これまでさまざまな手段で原稿を送ったが、野沢温泉の「動く歩道」に揺られながら親指一本で携帯メールを打って送稿したのははじめてである。
ドライブ感のある原稿に仕上がっていればよろしいのであるが。
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