武術的立場な男たち

2006-12-17 dimanche

ひさしぶりの土曜日の稽古。
8月から12月までで、芦屋で稽古できるのはこれが3回目。
土曜日にぎっしり仕事が詰まっていて、ずっと「週末のない秋」だったのである。
やれやれ。
久しぶりに広い畳の上で存分に身体を動かせるので、もううれしくてにこにこしてしまう。
毎日新聞の取材(水曜の続き)で遠藤記者とカメラマンが来ている。
ぱちぱちと写真を撮られたが、こんなうれしそうな顔をして稽古をしている人間というのもわりと珍しいのではないかしら。

たっぷり汗をかいて、シャワーを浴びてから中之島の朝日新聞社へ。
朝カル「武術的立場」シリーズ最終回。
今回のお相手は神戸製鋼ラグビー部の平尾剛さん。
甲南麻雀連盟で会長や画伯やだんじりエディターを尻目に今期トップを独走する「どんとこい雀士」の素顔は何を隠そう日本ラグビー界の至宝俊足ウイングだったのである。
2003-2004年のシーズン末尾に右手に重傷を負ってから二シーズン、私たちはフィールドを疾駆する赤いジャージ14番を背負った平尾選手の姿を見ることができなかった。
だが、その間も平尾選手はたゆむことなく独自の身体理論を深化させ、伝統的な身体技法(古武術や能楽)をラグビーにどう応用するかを探求し続け、大学院博士前期課程では教育学を学び修士論文の準備をしてきたのである(ついでに麻雀技術も進化させてきた)。
そんな平尾さんと麻雀のあとの「反省会」では、いつもラグビーと武術の話で盛り上がっているのであるが、横から画伯とかエディターとかが「それはだんじりでいうたら」とか「それはバスケットでいうたら」とかいろいろとコメントをさしはさむので、じっくり差し向かいで90分という機会は実はありそうでなかったのである。
平尾さんとゆっくりとラグビーの話をしたいなと久しく思っていたのであるが、改めて電話をかけて「あ、平尾さん? 今日暇かな〜。あのさ、ワインでも飲みながらじっくりラグビーの話しない?」というふうに誘うというのもなにかなし違和感がある。
困ったものだと思っているときに私のアクマのごとき狡知が「武術的立場」という企画を思いついた。
常日頃会ってじっくり聴きたいなと思っていた意拳の話を守さんから、スポーツへの武術理論の応用の話を高橋さんから、ラグビーと伝統的身体操法の話を平尾さんから、それぞれ伺い、その日程調整を朝カル事務局のモリモトさんにやっていただき(おまけにギャラまで頂き)、ついでに録音して朝日新書から本にして出し、帰り道にはプチ宴会で魔性の女フジモトや浜松の海老ちゃんとの久闊も叙そうではないかという一石五六鳥の費用対効果の高いプロジェクトだったのである。
最終回はスティーラーズの11番を背負う新星瓜生靖治選手を平尾さんが連れてきてくれた。先日の花園での華麗なステップで、神鋼の未来は彼に託そうとウチダに確信させてくれた切れ味最高のセンターである。
対談は私が「徹子」の分を超えていささかしゃべりすぎてしまった。
「ラグビーはイギリスの帝国主義的植民地支配に必要な資質を涵養するものであった」という話を思いつき、それでどうしてラグビーと武術がつながるのか、その理路が見えたような気がする。

終わってから、守さん高橋さんはじめ、ウッキー、かんきちくん、魔性の女、海老ちゃん、日立のオオウチさん、ミキハウスのオガワさんなどなど「常連聴衆」のみなさん、アオヤマさん、スーさん率いる浜松支部の先生方、予備校帰りの青ざめたIT秘書イワモトをもまじえて大挙19名で北新地にて打ち上げ。
ラガーメン2名、教師8名、編集者2名、呉服屋の若旦那1名、受験生1名、カタギの勤め人(ごくごく)若干名。
「これは何の団体の忘年会でしょう?」クイズに回答することの困難なメンバー構成であった。
みなさんどうもありがとう。
またそのうち同じシリーズで「帰ってきた武術的立場な男たち」というのをやりましょうね。モリモトさん、よろしく。
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